出版社内容情報
チェリストの黛由佳が放火事件に巻き込まれて死んだ。由佳の自由奔放な演奏に魅了され、彼女への思いを秘めていたチェリストの坂下英紀は、火神の異名をもつ孤高のチェリスト鵜崎顕に傾倒し、「鵜崎四重奏団」で活動していた彼女の突然の死にショックを受ける。由佳の死に不審を感じた英紀は鵜崎に近づき、死の真相を知ろうとする。音楽に携わる人間たちの夢と才能と挫折、演奏家たちの<解釈>と<物語>に迫る、長編ミステリー。
内容説明
チェリスト黛由佳が放火事件に巻き込まれて死んだ。かつて音大時代に由佳の自由奔放な演奏に魅了されていたチェリスト坂下英紀は、火神の異名をもつ孤高のチェリスト鵜崎顕に傾倒し、「鵜崎四重奏団」で活動していた彼女の突然の死にショックを受ける。演奏家として自分の才能に自信をなくしていた英紀は、同じように苦しんでいた由佳の死に不審を感じ、「鵜崎四重奏団」のオーディションを受けて鵜崎に近づき、由佳の死の真相を知ろうとする。
著者等紹介
逸木裕[イツキユウ]
1980年東京都生まれ。ウエブエンジニア業のかたわら小説を執筆。2016年『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。’22年「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
167
芸術家志望者が主人公の小説は多いが、むしろ日本の硬直した楽壇への叛逆者である鵜崎四重奏団の設定が興味深い。オーケストラ中心の音楽界では客を呼べる指導者が大きな力を持ち、そこへ入れなければ活動が難しい。神経質で深く考えすぎるため組織になじめぬ脱落者は必ず出るが、そんなチェロ奏者を集めて独自の活動を続けるのは他の楽団と断絶するので、孤独に耐えられねばやっていけない。反対を許さない独裁者が率いる形で活動するのは、過激派やカルト集団に相通じる。はぐれ者のセーフティネット内で音楽家が生きられるのかがテーマに思えた。2024/01/18
いつでも母さん
149
【辛口御免】ん~ん・・ん・・んな感じ。音楽ミステリーとあるがそこまで?『私たちは、本当に音楽を理解できているのだろうか?』いやいや、音楽だけじゃない相手をだよね。女性チェリスト・黛由佳の死の真相を探るチェリスト・坂下英紀の言動から見えるのは〈解釈〉の捉え方だった。芸術とか音楽とか私の知らない世界は多分奥が深くて、表現はそれぞれ違うのだろう。見る方聴く方の感じ方も多様なのだろう。それで好いんじゃないだろうか?なんて素人の私は思う。感じ方は人それぞれだ。ただ本作は私には合わなかったというだけで・・ 2024/01/18
trazom
115
ミステリー小説に全く興味はないが、チェリストが主題ということで手に取る。謎解きのストーリーを評価する能力はないが、音楽に対する指摘にドキッとさせられる。「観客は音楽を何も理解できていない」「理解した積りになっているだけ(錯覚)」とシニカルに語り、だから、演奏家がすべきは「徹底的にテクニックを磨くこと」「模倣すること」であり「錯覚を与えるための演技力」だと。本作に登場するプロの音楽家と、我々のような気楽なアマオケ団員は全く違うが、「音楽とは何か」「演奏とは何か」の本質に投じられた一石に、たじろぐ自分がある。2024/07/02
ゆみねこ
76
放火事件に巻き込まれ命を落としたチェリストの黛由佳。由佳の演奏に魅了されていたセミプロのチェリスト・坂下英紀は、彼女の死の真相を探るため「火神」の異名を持つチェリスト・鵜崎顕の『鵜崎四十奏団』のオーディションを受けようとする。音楽を理解すること、演奏者も聴衆も、とても難しいことだと感じた。2024/04/14
hirokun
72
星3 音楽を題材にしたミステリー小説の形をとっているが、ミステリー小説としては何か納得できない部分が残った。ミステリーとしてはいまいちであったものの音楽を含め、他人の行っていることを解釈することの困難さについてはよい問題提起をしてくれた。演奏の良しあしについても心理学的にも解明されている様々な歪が評価に大きな影響を与えている。だから、所詮他人を理解することも、正しく解釈することも不可能であり、解釈しようとすることに意味がないという極論に走ろうとするが、正しいかどうかは兎も角、理解しようと努めることは重要。2024/01/29
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