内容説明
今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、義父でありコンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、父についての本を書きたいらしいから、相談にのってほしいというものだった。梶田は、石川町のマンション前で自転車に撥ねられ、頭を強く打って亡くなった。犯人はまだ捕まっていない。依頼を受けて、梶田の過去を辿りはじめた杉村が知った事実とは…。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年東京都生まれ。1987年、『我らが隣人の犯罪』で第26回オール読物推理小説新人賞を受賞してデビュー。『龍は眠る』で第45回日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で第13回吉川英治文学新人賞、『理由』で第120回直木賞をそれぞれ受賞。その他受賞歴多数
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感想・レビュー
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ふじさん
97
杉村三郎は、義父で今多コンツェルンの会長である義親から、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘が父についての本を出したいらしいので相談にのってほしいとの依頼を受ける。梶田は、自転車に撥ねられ、頭を強打して亡くなっていた。犯人はまだ捕まっていない。依頼を受けて二人の娘や多くの人々から梶田の過去を辿るうちに、思いがけない事実が次々に明らかなる。聡美の幼い頃の怖い思いとそれに絡んだ梶田夫婦が関わった殺人事件、聡美の結婚に関わる思わぬ事実等が絡まり梶田の死の真相は最後まで予断を許さない展開。理屈抜きで面白い。 2023/09/24
さおり
77
10年積んでた本。久々の宮部さんでしたが、おもしろかった。どうやら続編がある感じ?そのうち読もう・・・また10年後だったりして。杉村さんの奥様がとてもすてき。私もこんな奥様になりたい。2015/05/18
Yuka Saito
32
宮部みゆきさんは『人間』を書かせたら本当に上手い。悪意を持つ人間も、そうでない人間もまるで見てきたかのようだ。今回も様々なタイプの人間が折り重なってのストーリーだったが、不思議と嫌気がささず、寧ろその人間模様と展開にもっと読みたい!と思わされてしまった。こりゃ『名も無き毒』や『ペテロの埋葬』も読むしかないでしょ!2013/11/23
akira
30
杉村三郎シリーズ第1段。 久々に読まされた。上下二段組ながら、いっときも長さを感じさせない展開。そう、この物語は実に丁寧に書かれているのだ。 人間の内に潜む闇。普段は世間体や品格で覆われていても、隠し切れない本性。普段は笑顔でも、人は皆、いろいろなものを背負って生きている。隠したい闇と、闇から出た錆。不幸の原因は、いったいどちらだろうか。 物語の登場人物に好感を持つことは少なくない。今回は、梶田氏が印象に残る。おしゃべりな男よりは、口数の少ない男の方が信用できる。 「石の口の持ち主だ」2014/03/29
ロッキーのパパ
27
梶田家と杉村家、二つの家族の境遇の差が物語に重くのしかかっている。 三郎が誠実に接していても、根本的なところで通じていないところがもの悲しい。 宮部作品らしく重厚な物語で読み応えはあるので、続編も楽しみ。2014/01/04