内容説明
京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは?一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)。京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。本格推理の極北4編。
著者等紹介
麻耶雄嵩[マヤユタカ]
1969年5月29日三重県上野市生まれ。京都大学工学部電気系学科卒。1991年『翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件』で衝撃的なデビューを飾る
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
78
木更津&香月シリーズ。メルシリーズに見られるアンチ寄りの難解さはなりをひそめ、至極真っ当な(笑)犯人当て中心のパズラー短編集。とある場所での目撃情報が多発する「白幽霊」を全編の共通ワードに、ほんの少しオカルトファンタジーな雰囲気を匂わせつつ、きっちりと王道な本格ものに仕上がっている。特に『交換殺人』の凝った構成には唸らされた。『時間外返却』では、香月の「探偵とはかくあるべき」のような一節があり、ストイックで強い意思を持つ木更津への強い憧れが伝わる。確かに彼の本音なのだろう。→(コメントに続く)2013/12/17
momi
31
派手さはないけれど推理小説らしい作品です!短編4編「白幽霊」つながりの奇妙な事件を解決していくシリーズ。名探偵「木更津」とワトソン役の作家「香月」とのやりとりが楽しい。2015/03/09
kate
29
古典的でオーソドックスな名探偵木更津悠也の短編集。香月(読者)が木更津(推理小説)に求める名探偵像が描かれた作品でもある今作では白幽霊が見え隠れする4つの事件を春から冬へと移り行く季節と共に描いています。これから先白幽霊が木更津に何を訴えかけるのかが気になりますね。2014/08/06
ほぼ一日一麺
21
木更津悠也シリーズ初読。4つの殺人事件に対し、《白幽霊》と《ワトソン役・香月の何気ない一言》を触媒として、名探偵木更津が名探偵ぶりを発揮していく。木更津と香月のこういう関係性前提なシリーズなようで。なるほど、名探偵の物語というよりも、名探偵とはこうでなければならないという信念の持ち主によって語られる名探偵譚な構図というべきか。だからだろう、本人の本意に関わらず祭り上げられる名探偵側の苦悩は語られないのだ。2015/09/21
フリスビー
20
京都某所に出没する「白幽霊」をめぐって起きる4つの事件を、「名探偵」木更津と語り手香月が解決していく、まっとうな本格推理です。しかし、メルカトルほどではないですが、シニカルで一筋縄ではいかない内容ですね。話としては、「禁区」がなんともぞくっと来ました。「名探偵」は作られる……。本物のワトスンも案外こうだったのかも知れないと思ってしまいました。2013/12/26