内容説明
一人息子の隆一を交通事故で喪い、妻の佳乃にも先立たれた作家の成田正隆は、傷心を癒すべく、佳乃の郷里・佐賀への旅に出た。佳乃を生み、そして育んだ佐賀の風土の中に身を置いて、亡き妻の面影を偲ぶ旅である。旅の行きずりで知り合ったOL・椎葉有紀。妻と同じ雰囲気をもつ有紀が、唐津の名勝・七ツ釜で、水死体となって発見された。有紀の妹・優香と二人で、事件の真相を探り始めた成田は、自らを襲った一家の悲劇とも結びつく、人間関係の“奇しき縁”を知る―。佐賀、唐津、そして熱海。森村誠一が美しい風光の中に紡ぎ出した、旅情あふれる珠玉の社会派推理傑作集。