内容説明
東京大学の1・2年生38人がゼミ形式の授業で自身の人生と教育の関わりを語り合った半年間の記録。
目次
東大生と教育格差を考える
現在に至る軌跡を振り返る
すべては「頑張った」結果?
教師にできることを考える
他者の困難を想像する
「地元」との距離
非行少年と向き合う
格差と向き合う進路指導
同期生の八割は男性
多文化社会を生きる
部活の意義
いじめと対峙する
東大生と教育格差を統括する
著者等紹介
松岡亮二[マツオカリョウジ]
龍谷大学社会学部社会学科准教授。博士(教育学)
〓橋史子[タカハシフミコ]
東京大学教養学部特任講師。博士(社会学)
中村高康[ナカムラタカヤス]
東京大学大学院教育学研究科教授。博士(教育学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けんとまん1007
50
他者の合理性という言葉が印象に残る。何事にも、そこに至るプロセス・思考があるということを、改めて、考える。そのうえで、教育格差とは、それを構成する要素として何があるのか。それを一つ一つ、考えるだけでなく、表現しあ会うことで、気づくことも多くなる。それを、この本を読むことで追体験したように思う。ここで、取り上げられているのは、教育格差ではあるが、同じことが、いろいろな場面・切り口でも当てはまる。考え続けていこうと思う。2024/09/21
よっち
37
東京大学で2021年度後期に実際に行われたゼミ形式の授業「教育格差入門」の模様をまとめて紹介する一冊。出身家庭の世帯収入が平均的に高いと言われる東大生と、子ども本人が変えることのできない教育格差や機会の平等、教師にできることや他者の困難を想像すること、地元との距離や格差と向き合う進路指導、多文化社会、いじめ、部活などについて考えてゆく内容で、大学に入学して個々の環境の違いに対するカルチャーショックもある一方で、知りえないものを想像することはやはりなかなか難しい中、こういう授業をしているのは興味深いですね。2023/04/12
kan
25
東大の授業ディスカッションを基にした一冊。東大生が格差を語ることに無理があるのではという懸念を払拭し、知識と教養が、異質な他者へ想像力をもって理解しようとする姿勢につながることを体現している。同質性の高い集団で過ごしているとその文化や価値観は強化されやすいため、別のコミュニティへの所属や異なる刺激を意図的に配備することが教育者には必要だと改めて思った。2024/09/19
まゆまゆ
17
生まれ育った環境による違いが教育格差を生んでいる、というテーマのゼミを東大生相手に行った様子を紹介していく内容。恵まれた環境と本人の努力によって東大生になれたと感じつつ、周りの人達との違いに思いを馳せることで実際に生じていた格差のようなものを意識する、という感じなのかな。2023/05/16
リットン
12
東大のゼミ形式の授業を、可能な限りそのままに近い形でまとめ直していて、学生たちが新しい知見に気づきながらも社会の難題に自分なりの意見、解釈を絞り出しているのが感じられる。多忙を極めた高校生活を終え、地元を離れ、育った環境の違う人と会ってカルチャーショックを受け、自由な時間を得て、いろんなことを感じているであろう1,2年生が、また自分の知らない世界を知り、わかったつもりだった世の中がもっと複雑で難しいものだったと、わからなくなっていく様子を、当時の自分を思い返しながら、懐かしくも感じた。2023/04/05