出版社内容情報
日本の生命科学は世界に対し遅れをとっている。絶望の淵に落とされた我が国の状況を、若い研究者の力で救い出す方策を提案する。
内容説明
明治維新以降、日本への欧米の科学技術の導入は見事に成し遂げられ、直ちに生命科学史に名を刻む巨人たちを輩出した。しかしこの輝かしい成果はその後すぐに破壊されてゆく。原因として、一、独創的研究を評価せず他人の成功を妬む国民性、二、大学教授たちの利己性による後継者の矮小化、三、教授たちの提案を唯々諾々と受け入れる政府の人々の見識の欠如、四、真に独創的な研究を評価し広く報道すべき新聞や学術誌編集者の能力の著しい劣化がある。さらに深刻な打撃となったのが国立大学の独立行政法人化である。現在もワクチン等医薬品の開発でも世界に対し周回遅れの日本。九十歳近い今も研究を続ける筋収縮研究者が、自身の経験を振り返りつつ、日本の生命科学を若い独創性に富む研究者の力で救い出す方策を提案する。
目次
明治維新による欧米の学問の我が国への移植
たちまち開花した我が国の生命科学研究
生命科学を衰退させる我が国の国民性
エレクトロニクス技術による神経生理学の黄金時代
理化学研究所での脳科学総合研究センターの創設と、脳研究の不振
分子生物学の勃興を傍観し続けた我が国の分子生物学者
外圧により表舞台に引き出された我が国の分子生物学者
国立大学有名教授による科学研究費の私物化
極めて高かった新聞科学欄記者の能力とその急激な劣化
我が国の新型コロナウイルスワクチン作成の「周回遅れ」の原因
国立大学の独立行政法人化の強行とその結果
我が国の生命科学再建のための基本方策
我が国の生命科学振興のための具体策の提言
著者等紹介
杉晴夫[スギハルオ]
1933年東京生まれ。東京大学医学部助手を経て、米国コロンビア大学、米国国立衛生研究所(NIH)に勤務ののち、帝京大学医学部教授、2004年より同名誉教授。現在も筋収縮研究の現役研究者として活躍。日本動物学会賞、日本比較生理生化学会賞などを受賞。1994年より10年間、国際生理科学連合筋肉分科会委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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