出版社内容情報
朝日新聞の記者が目の当たりにした郵便局の「闇」。すぐそばの郵便局でこんな光景が広がっているのかと、耳を疑うような実話を描く。
内容説明
日本郵政グループは、二〇二一年に郵便事業の創業から一五〇年を迎えた。従業員四〇万人を超える巨大組織は「腐敗の構造」にはまって抜け出せずにいる。近年では、かんぽ生命の不正販売、内部通報制度の機能不全、ゆうちょ銀行の不正引き出しと投信販売不正、NHKへの報道弾圧、総務事務次官からの情報漏洩と癒着など、数多の不祥事が発覚した。一連の事象の底流にあるのは、問題があっても矮小化し、見て見ぬフリをする究極の「事なかれ主義」だ―。スルガ銀行や商工中央金庫による大規模な不正事件など、金融業界の不祥事を追及してきた朝日新聞の記者が、巨大グループの実態にメスを入れる。
目次
第1章 暴走―ターゲットは高齢者
第2章 隠蔽―異論を許さない組織風土
第3章 病根―「被害者を見捨てる」銀行の論理
第4章 激突―NHK vs.日本郵政
第5章 検証―経営陣の“無責任体質”
第6章 歪み―官邸支配の構図
終章 教訓―組織変革のカギ
著者等紹介
藤田知也[フジタトモヤ]
朝日新聞記者。早稲田大学大学院修了後、2000年に朝日新聞社入社。盛岡支局を経て、’02~’12年、「週刊朝日」記者。経済部に移り、’18年4月から特別報道部、’19年9月から経済部に所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
29
郵便というのは、不便な非経済的な場所にも荷物や手紙をしっかり届けるという公的な要素が多分に強く、住民ひとりひとりのプライベートな状況も配達物や日常のふれあいから知りえてしまう。政治との絡みも強い。そこに保険勧誘が絡まれば、絶大な効果を発揮するが、民営化でもいけるという間違った判断のもと、黒字を達成するために不正が拡大していった。国営化と保険事業との分化を図る必要を感じる。郵政民営化を開始する時点では、成功するかどうかはわからなかったかもしれないが、失敗だった以上、非民営化を急がないといけないと思う。2021/08/09
あんさん
7
「日本型組織の〜」とあったので、その部分を期待したが、正直物足りなかった。最先端社員とトップ層の部分の描写はよく分かるが、過酷なノルマが何故押し付けられ、中間管理職はパワハラで部下を追い込むまでになるのか、社内のボトムアップは機能してないのか、等は読み取れなかった。民営化で株価維持、経営者の保身、異論を許さぬトップダウンという単純な図式だけではないと思うのだが。2021/08/13
Y Sー51
4
郵政は民営化して10年以上経つが、役職の大半は公務員時代の人間だし、経営幹部の人間は官僚が多い。 役所体質の企業は「今まで通りで変わりたくない」と考えている人が多く、自分の保身を最優先で考えている限りまた不祥事がおきると思う。2021/04/23
TK39
4
なかなかハードに切り込んだルポ。政官が入り組み、さらに現場も特定郵便局と普通局とが混在する難しい組織であることは間違いない。地方を支える重要なインフラでもあり、郵貯もかんぽも切り捨てられない。 デジタル化などの環境変化もあるが、どのように変わっていくのか?2021/04/19
あしお
3
しばらく読書から遠ざかっていた。 その理由は、この本がつまらなくて読むのに半年かかっていたせいでもある。 もちろん、書かれている内容はしっかりとした取材に裏付けされたものであろうし、組織のあり方を考えるのにとても必要なことが示唆されているのだろう。 単純に好みに合わなかったというだけのことなので、この本を低評価するつもりはないです。 2022/09/05