出版社内容情報
田原徳容[タハラ ノリマサ]
著・文・その他
内容説明
トランプ大統領の就任後、「移民の国」アメリカは様々な形で不法移民への圧力を強めている。強制送還や入国制限で、家族と離れ離れになった者も多い。それでもなお、アメリカを目指す人の波が途絶える気配はない。中南米、アジア、中東、アフリカ…。あらゆる場所からあらゆる事情の人々が、国境という壁を越えてくる。受け入れるか、拒むか、それとも無視か。彼らをめぐってアメリカ社会もまた、ゆれている。はたして、アメリカはこれからも「夢の国」でいられるのか?読売新聞ロサンゼルス特派員が、一五〇人に上る不法移民とその周辺を追いかけた渾身のルポ。
目次
第1章 メキシコ国境
第2章 カナダ国境
第3章 日系人
第4章 「聖域都市」
第5章 米国で働く夢
第6章 入国制限の国の人々
第7章 国境をゆく
第8章 DACA
第9章 移民はどこへ
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
69
トランプ時代の移民を取材したルポ。母国を暴力で追われた人や経済的に困窮し米国に渡った人、支援する人や移民に娘を殺された人、聖域都市や国境の様子、入国制限された国の様子等、どれも興味深い。難を言えば移民関係者への取材ばかりで、反対派の立場からの取材はほとんど無い点か。それでもイスラム教徒がカナダへ脱出している事や、第二次世界大戦中強制収容された日系人が移民に関わろうとする様子などは初めて教えられる。バイデン政権が始まってすっかり報道される事はなくなったが、現在どのようになっているかが読み終えて気になった。2021/10/07
skunk_c
51
読売新聞ロサンゼルス特派員の著した、不法移民や2018年現在は法的保護にあるが、それがトランプによって打ち切られる可能性のある人たちに対する丁寧なルポ。著者は当初不法移民の「不法」にとらわれ、トランプの政策にも賛否両方を持っていたようだが、取材を続けるうちに意識が変わっていった様子が感じられる。かつての日系人強制収容と現在の日系人達の移民政策の対応が挿入されており、本書が立体的になった。「元をただせばアメリカ人は殆ど移民で、法律が後からできた」という支援者の言葉が核心を突く。大統領選のゆくえが気になる。2020/11/02
James Hayashi
30
1100万人もの不法移民。150人余を取材し移民の現状を知れる。驚きは国境付近で不法移民が拘束されても、バッググランドに問題なければ強制送還されず米国内に放たれている事。これは彼らを難民として認定している為か?難民としてなら人権問題になるため、強制送還せず丁重に扱っているとみられるが、そうでないケースも見られる。ケイト法の容疑者は麻薬で捕まり何度も強制送還されながら入国を繰り返している。https://en.m.wikipedia.org/wiki/Shooting_of_Kathryn_Steinle 2018/12/24
sayan
20
本書は「ルポ難民追跡」と同様、様々な人々に語りかけ、質問し、応答に対して著者の率直な「気持ち」が盛り込まれ生々しい。移民、不法移民にどう向き合えばいいのか、取材が進むに連れて著者の考えは大きく揺れる。自分事だが在米10年の間に類似場面は何度かあった。心情という意味で、割り切れなさは理解できる。が、ハーバード大学の入江教授が言う国籍ではなく人権を根拠に自由な移動論への安易な賛同は難しい。それは欧州政府が見せるグローバルコンパクト反対に通ずる。が、難民に関して保護の観点から別ロジックで考えるべき内容だと思う。2018/11/11
ののまる
8
実は「不法移民」がいることで、困ることより社会が良くなることの方が圧倒的に多いアメリカ。2019/08/13