出版社内容情報
藤井一至[フジイ カズミチ]
著・文・その他
内容説明
世界の土はたった12種類。しかし、毎日の食卓を支え、地球の未来を支えてくれる本当に「肥沃な土」はどこに?そもそも土とは一体何なのか?泥にまみれて地球を巡った研究者の汗と涙がにじむ、一綴りの宝の地図。
目次
第1章 月の砂、火星の土、地球の土壌(肥沃な土は地球にしかない;月には粘土がない ほか)
第2章 12種類の土を探せ!(土のグランドスラム;裏山の土から始まる旅 ほか)
第3章 地球の土の可能性(宝の地図を求めて;世界の人口分布を決める土 ほか)
第4章 日本の土と宮沢賢治からの宿題(黒ぼく土を克服する;火山灰土壌からのリン採掘 ほか)
著者等紹介
藤井一至[フジイカズミチ]
土の研究者。国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。博士(農学)。京都大学研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。土の成り立ちと持続的な利用方法を研究している。第一回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)、第三十三回日本土壌肥料学会奨励賞、第十五回日本農学進歩賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
220
なかなか光が当たらない存在の「土」には未知なる可能性が眠る。地球には12種類が存在するという。裏山にも土はあるが、世界中を探検しなければ全種類とは触れ合えない。遥かなる土を求めての旅。愉快で丁寧な文章は読みやすく、視野が広がっていく。この星の大陸にある肥沃な土壌、そこに人間は自然と集まっていく。各々の土の特性を調べて土壌を改良する術を研究する目的は人類のためである。作物を作れば土から栄養が奪われる。人間は土を質でも量でも使いすぎている。土を大切に。植物を支える土をこれまで以上に愛しく見つめてしまうだろう。2023/10/04
アナクマ
73
バッタの人や鳥の人、恐竜の人に続き、理系新書書きの若手研究者に新星現る!です。◉我々を養う根源的な物質であり、地球最後のナゾ「土」(12種類!)を求めて冒険の旅へ。同行する読者は、地球の表面を覆うこの薄っぺらな被膜が、人類にとって死活的に重要な奇跡の産物であることをよく知ることになる。◉土に関する基礎知識だけではなく、新書らしい軽快な言葉遣い。そしてそれとは裏腹に、100億人を養うことができるのか?という真摯な問題意識も伝わってきます。2018/09/11
六点
71
さて、何処にでもある土、その種類は世界にたった12種類しかないことなど、全く知ることは無かった。有機物に富むが、特定のミネラルに欠いた土。かといえばミネラルしかなく有機物に欠ける土、世界には多様な土がある。その中で農耕に向いた土は肥沃な土はチェルノーゼムと水田土壌だけである。とか、なぜそのようになっているか等多様な論点を軽妙な語り口で文系の読者にも楽しく伝えている。関東で広く蕎麦が食べられるのも、土壌の性質にその一因があったりするのだ。ありふれて貴重な土、その世界の奥深さに触れることが出来た。2019/02/22
saga
65
土壌学を専攻し、土を求めて世界を巡る。時に不審者として職務質問され、時にトレジャーハンターに間違われる著者。少し前にラジオ出演していたの聞いた記憶がある。全人類100億人を飢餓から救う壮大な目標! 12種類の土の研究は、いきおい農業と密接なつながりを持つ。日本の土は結構肥沃だと思っていたが、火山灰と腐植が堆積した酸性の黒ぼく土という分類になるという。畑は、確かに苦土石灰での中和が必要だし、肥料を施さなければ作物がうまく育たない。水田は、水を張ることで中和されるという視点が得られた。本棚は自然科学、農業へ。2021/10/05
tamami
58
「100億人を養う土壌」をキーワードに、大学の研究室の裏山から始まる著者の「地」味な研究は、本書という内容の濃い充実した、何よりも楽しい一冊の本として「実」を結ぶ。本書には、農業に適した肥沃な土壌を求めて、スコップ1本を手に、世界各地を飛び回る著者の研究の経過が、地口・軽口をふんだんに取り入れた会心のストーリーとして語られる。「土」に関する研究書として、本書に教えられることが甚だ多かったことも告白しなければならない。世界の土壌が主として12種類のそれに大別されること。作物の育成に適した肥沃な土壌もあれば、2022/05/25