内容説明
私たちは日々、五感―視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚―からたくさんの情報を得て生きている。なかでも視覚は特権的な位置を占め、人間が外界から得る情報の八~九割は視覚に由来すると言われている。では、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか―?美学と現代アートを専門とする著者が、視覚障害者の空間認識、感覚の使い方、体の使い方、コミュニケーションの仕方、生きるための戦略としてのユーモアなどを分析。目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことそのものを問い直す。
目次
序章 見えない世界を見る方法
第1章 空間―見える人は二次元、見えない人は三次元?
第2章 感覚―読む手、眺める耳
第3章 運動―見えない人の体の使い方
第4章 言葉―他人の目で見る
第5章 ユーモア―生き抜くための武器
著者等紹介
伊藤亜紗[イトウアサ]
1979年東京都生まれ。東京工業大学リベラルアーツセンター准教授。専門は美学、現代アート。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文系に転向。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。日本学術振興会特別研究員などを経て2013年より現職。研究のかたわら、アート作品の制作にもたずさわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
411
発想の変身ができる本です。見えることによって死角ができる。見えない人には死角がなく客観的に三次元的把握をしている。例えば月には表裏があり、私たちには表面を見せてくれているけど、本来は面ではなく球体。人は同じものでもいろんな見方をしている。目という器官が優先されているが、耳で見る、目で聞く、鼻で食べる、口で嗅ぐという感覚はみんなが無意識にやっている能力。それを脳にどう描くのか。…感覚を研ぎ澄ますために情報は邪魔をするときがある。顔や見た目より声や言葉を重視にするという、本来あるべき大切なことを教えてくれる。2021/04/04
けんとまん1007
270
想像できない世界がここにあると感じた。それにしても、人間という不思議な能力の塊を再認識せざるを得ない。五感をふるに活用して・・・というのとも違う世界がある。どう認識し、どう判断しているのか。人は、それぞれ違うということを前提として考えると、いくらかハードルが下がる。お互い様というスタンスがいいのだと思う。2017/06/29
はっせー
235
ゼミの教授からのおすすめ本。めっちゃ面白かった!視覚障害者にフォーカスして話が進められる。私たち健常者は視覚を重視しすぎているためそれ以外の感覚を軽視しまっている。視覚障害者の方は視覚以外の感覚を使い生活している。人によっては楽しんでいると書いてあり驚いている。視覚障害者といって私たちは可哀想だとか気を遣わないといけないものと理解してしまう。しかし障害がある方も人によって千差万別である。それを一括りにするのは本当にいけないことである。視覚がある私たちこそフィルターをかけて見てしまっていることを実感した!2021/04/03
舟江
201
「見えないことは欠落ではなく、脳の内部に新しい扉が開かれること」だという。また、健常者が、障害のある人と接するときに、何かしてあげなければいけない、とくにいろいろな情報を教えてあげなければいけない、と構えてしまうことは良くない。など、考え違いを指摘してくれる本であった。2019/07/16
ダイスケ
179
audibleで視聴。長い間、積読本となっていたが聞き流しならと再生した。「何で、もっと早く読まなかったんだろう。」が読み始めての感想。学術的でも視覚障害者を支援することが必要なんだと説くこともなく、「見えない」ことが見えていないことではないと気づかせてくれた。 ヨシタケシンスケさんとの絵本が出版されているとのことなので、機会を作って読んでみたいと思った。 人と違うことに生きづらいと感じるなら、この本は視点を広げる、変えるきっかけになるかなと思う。2022/08/28