内容説明
内ゲバ殺人、少女凌辱、火事、大量死…ドストエフスキー最大の問題作『悪霊』。作家が「自分の魂の中から取り出した」という主人公スタヴローギンをめぐり、日本語新訳の訳者と、ロシアにおける研究の第一人者が、ドストエフスキーと小説の「魂」に迫る。
目次
プロローグ―『悪霊』幻想
「対話」のはじめに
第1部 ダイアローグ―二〇一一年一月二十三日の記録
第2部 質問と回答
アイスランドのスタヴローギン
アウラを求めて
著者等紹介
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。東京外国語大学長
サラスキナ,リュドミラ[サラスキナ,リュドミラ][Saraskina,Ludmila]
1947年生まれ。ロシア国立芸術学研究所主任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マエダ
59
このような解説書は個人的に読んでも理解できない部分を十二分に補ってくれて良い。2018/10/09
ころこ
26
亀山は、キリスト教文化圏により近いことがドストエフスキー理解に直結するとする従来の読解からの逸脱だと批判されます。サラスキナがキリスト教文化圏から自然に読解しているのに対して、亀山は美と醜、善と悪、献身と傲慢が混在する世界こそ人間の真のリアリティがあるとするの着眼点に拘ります。「ドストエフスキーに感じている最大の魅力とは、どのような登場人物に対しても両義的な態度をとる、という点です。」現代と文学を接続するのはどちらかといえば、外国人の変な勘違いの方が可能性を秘めている、というのが文学本来の立場のはずです。2018/08/21
LUNE MER
14
「悪霊」を既読で消化不良を解消したり考察を深めたい読者にフィットしそうな本。じゃんじゃんネタバレしていくので、本編未読でネタバレ回避したい方は一旦控えるべし。新訳を手がけた翻訳者とロシア人の研究者との対談(質疑応答)の形で展開していくので、かなり深い。下手すると「悪霊」を楽しむためにはそこまで知らなきゃいけないのかというハードルにも感じるが、これを読むとまた本編を読み返したくなるという誘因になる。2023/05/19
noémi
10
難解な「悪霊」。精読したつもりだが、いかんせんロシアの歴史や風俗に精通しておらず、わからないことが多かった。訳者の亀山氏とロシアのドストエフスキー研究者のサラスキナ氏の質問と応答の数々。これを読むことによって、その当時のロシア文壇の考え方が掴める。特に「スタヴローギンの告白」の中には赤裸々に14歳の少女との淫行を描写しているためスキャンダラスで受け入れ難いものだった。正教的な見方をすれば、スタヴローギンはアンチ・クリスト者なのだろうが、この小説は普遍的な「人間の存在理由」を私たち日本人にも示唆してくれる。2012/11/13
はな
9
日本語翻訳者の亀山郁夫氏とドストエフスキー研究者のリュドミラ・サラスキナの対談。難解な悪霊をより理解したいと思って読んでみたが、本書もなかなか難しい。さらなる深みにはまってしまったような気がする。しかし日本人とロシア人という人種の違いによる解釈の差異が興味深い。アイスランドのスタヴローギンが面白かった。本編での少ない情報から、スタヴローギンの足跡を想像しながら辿るという発想がいかにも研究者らしいと感じた。2016/07/30