内容説明
なぜ「だまされる」ように心は進化したのか。「おろか」な行動は、実は生き残りための「賢い」戦略かもしれない。人間の心の働きを、生物進化の仕組みに照らし理解しようとする新しい学問、進化心理学。そのエッセンスを詳しく解説。進化の仕組みをもとにした、その成果から現代を生き抜く賢い戦略が見えてくる。
目次
序章 恐怖を手なずける
第1章 人生をうみだした進化の原理
第2章 遺伝子の生存競争
第3章 わかりあえないオスとメス
第4章 狩猟採集民の脳と心
第5章 人間は「協力するサル」である
第6章 文明社会への適応戦略―信頼の転換
第7章 現代社会の生きにくさにせまる
終章 だまされ上手の極意
著者等紹介
石川幹人[イシカワマサト]
1959年東京生まれ。東京工業大学理学部卒業。同大学院物理情報工学専攻、松下電器産業(株)研究開発部門、通産省の国家プロジェクトなどを経て、明治大学情報コミュニケーション学部教授。大学・大学院では、生物物理学・心理物理学を学び、企業では人工知能の開発に従事。遺伝子情報処理の研究で博士号(工学)を取得。専門は認知情報論および科学基礎論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuma Usui
30
生き物が進化の過程で得た種々の心のモジュールを進化心理学として解説した一冊。なぜ生き物は子孫を残すのか?それは子孫を残さない生き物(遺伝子)は死滅したため。との問答は目からウロコ。愛情は生殖戦略により遺伝子を次代に残し、友情は生存戦略により生き延びる確率を高めるためとの解説も興味深い。狩猟採集時代に獲得した心的モジュールに抗うのは難しいが、なお個人としてどう振る舞うのか無意識な箇所に意識を向けていこうと思える内容だった。興味深い分野だが円滑な人間関係のためにTPOに即した活用が大切な取扱注意な分野と思う。2019/12/01
ブラック
9
男が草食化する必然性、人の多様の重要性、口うるさい人の貴重さなど進化心理学をベースに興味深く読むことができました。何百万年と続いた厳しい狩猟採集時代を生き抜いてきた遺伝子が今の自分に引き継がれている。優柔不断であったり、内向的な部分もあるが、それも生き抜くために必要な感情であったんだなと思うと誇りに思える。と同時にありのままの自分を受け入れることができそうと感じた。2020/11/30
樋口佳之
9
協力関係を取り結ぶ事の功罪みたいな話や、現代社会が狩猟採取時代とあまりに変化していて心理の進化が追いついていないとか、互恵的利他行動の話とか、わかりやすく読めました。/一点疑問なのは、ほとんど非互恵的利他行動(自分の危険を省みず全くの他者を救おうとするとか、タイタニック号の楽団みたいな状態)は、どう説明ができたかという事。一見互恵的でなくても何か互恵的な面があるのか、全く別の仕組みが働くのでしょうか?2016/10/15
寛生
8
最後の章が一番よかった。2013/01/17
みどるん
7
文明の進歩に人間の心理は追いつけない。狩猟時代の心理のまま。すぐに怒る人はわざわざ自分のエネルギーを使い、人類という種を守っている。この考えには笑った。それにしても参考文献がとても多い。読みたい本が増えて困る。2014/08/21