内容説明
幼くして離婚に巻き込まれた子どもたちは、その後どのような発達の軌跡を描いていくのか。なかなか明かされない子どもたちの本心は―。本書では、心理臨床家として様々なケースをみてきた著者が、事例や諸研究をもとに解説。「日本の離婚」の抱える問題点に挑み、解決策を模索する。
目次
第1章 離婚で母親、父親はどう変わるのか―プロセスとしての離婚
第2章 子どもは親の離婚にどう反応するのか―年齢別に考察する
第3章 事例からみる―子どもにとって辛い離婚、救われる離婚
第4章 単独養育から共同養育へ―米国での試みに学ぶ
第5章 高葛藤離婚で壊れる子どもたち―「片親疎外」という病
第6章 事件・悲劇から学ぶ―子どもの福祉に適った面会交流を探る
第7章 葛藤を超えて離婚を成功させるには
著者等紹介
棚瀬一代[タナセカズヨ]
1943年生まれ。国際基督教大学卒業。78年から90年まで、関西および京都で「いのちの電話」相談員。90年京都大学大学院教育学研究科に社会人入学し、97年同研究科博士課程修了、99年博士(教育学)。90年から一二年間大津家庭裁判所家事調停委員。臨床心理士。京都女子大学現代社会学部助教授、帝京大学文学部助教授を経て、神戸親和女子大学発達教育学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
47
子どもにとって両親の離婚は少なからず心身に影響を与え、成長発達に支障をきたす。日本では離婚が増加して、3組に1組の夫婦が離婚している。夫婦間に子どもがいれば、子の成長や人生に大きな影響を及ぼすだろう。筆者はそれを「壊れる」と厳しい表現で述べている。離婚に至る原因・理由は様々だろう。しかし、子どもの幸福を第一に考えて「その後」を考慮、計画することは必須だと思う。子どもの権利を尊重する機運が高まっている今、調停員、家裁、行政、福祉協議会などの、子どもへの支援を一層手厚くしてほしい。2024/11/23
べるめーる
32
タイトルと内容には少々齟齬がある。壊れる子どもより、子どもを壊さないための社会や親のあり方に焦点が当てられている。心理面において大人のたどる段階や、年代別の子ども反応の考察、数々の事例、DVの種類等、扱われる内容ば幅広い。離婚当事者としては、どっしり重くのしかかる内容だ。共同養育を行うには双方の親がある程度親として成熟していて、子どもにコミットする気持ちが強くないと難しいのではないかと思う。日本にももっと親教育プログラムが浸透してほしいし、子どもへの教育プログラムも取り入れてほしいと感じる。2015/02/23
KJ
11
理不尽な日本の法律・現状に強い憤りを感じる。夫婦間に問題はあったかもしれないが、親子の間に問題はない。子供を連れ去った親が、子供の気持ちを無視して、もう一方の親に会わせない。こんなめちゃくちゃな話がまかり通る世の中でいいはずがない。一刻も早く単独養育ではなく、米国のように共同養育出来るよう法改正が必要。著者が女性だったことが意外だった。一人でも多くの人に読んでもらい、この悲惨な現状を知ってもらいたい。2017/10/31
makimakimasa
10
福原愛の長男連れ去り騒動が頭に浮かんだ。もし前夫に対する負のイメージを子供に植え付けていたら、それは子供自身の自尊感情を傷付ける心理的虐待行為となる。別ケースとして、子供と別居した父親の半分は交流を望まなかったとの調査結果あり、それは片親による見捨てられ体験として離婚それ自体より大きな傷を子に残すという。子供には出来るだけ多くの人から愛されるチャンスを与える事をパブリックポリシーとして、アメリカでは離婚カップルへの教育プログラム等が整備されている。ちょうど読了直前に、日本でも共同親権導入案のニュースあり。2023/08/29
すなき
7
小さい子どもは離婚のことなんてよくわかってないなんて思ったら大間違いなんだな。養育親の意識、無意識による操作で子どもに大好きだった別居親へネガティブな気持ちが刷り込まれて面会なども拒否してしまうのは残念だなと。離婚したときは親も必死なんだろうけど、子どもはそれ以上に危機的状況に晒されているんだってことが世の中にもっと広く認識されなきゃいけないと思う。2016/10/06