内容説明
桃山時代から江戸時代初期にかけて、豊臣秀吉や徳川家康といった時の権力者によってキリスト教は弾圧を受け、四千人とも言われる大量の殉教者が出た。これは世界に類を見ない特殊な出来事であるが、そもそもなぜ為政者たちは、キリスト教を厳しく弾圧しなければならなかったのか?また、宣教師や日本人キリシタンたちは、なぜ死を賭けてまで信仰に固執したのか?そこには、信仰心以外の“何か”があったのではないか?―本書では、クリスチャンだった遠藤周作氏の名著『沈黙』に加え、キリシタン迫害の様子を伝える数々の史料を批判的に読んでいくことで、「殉教」から見えてくる日本人特有の気質や死生観を明らかにしていく。
目次
第1章 遠藤周作『沈黙』に見る殉教
第2章 秀吉はなぜバテレンを追放したのか
第3章 武士のメンタリティと、聖遺物信仰
第4章 弾圧に歓喜するキリシタンたち
第5章 大殉教の時代
第6章 それでも日本を目指す宣教師
著者等紹介
山本博文[ヤマモトヒロフミ]
1957年岡山県生まれ。東京大学文学部卒業。’82年、同大学院修了。文学博士。現在、東京大学史料編纂所教授。『江戸お留守居役の日記』(講談社学術文庫)で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Sumiyuki
4
『沈黙』のロドリゴが民を守るために棄教する精神は現代的だと批判。そのあたりの根拠を滔々と説明してほしかったが、あまりなく。棄教した者たちの理由をまとめてほしかった。豊臣時代の弾圧は、武士階級や宣教者等の指導者集団に対してだった。彼らは誇りもあり、望んで殉教した。切支丹を探索する役人に対し、自ら名乗る人もいるほど、切支丹であることを隠さなかった。時代は下り、指導者階級が淘汰される江戸初期に入ると、民衆には殉教する誇りはなく、隠れた。処刑場には、罵声を浴びせる民衆がいた。日本人だなぁ。聖遺物。2022/02/13
okkb combine
4
遠藤周作の殉教を理解したいが為に購入した一冊です。読んでみてキリスト教に信仰し始めたのかがよくわかりました。
lily
4
遠藤周作の名著『沈黙』では宣教師や信仰者の神への葛藤が語られているが、史実を紐解くと彼らが喜びの中で命を捧げていった様子がありありと分かる。布教当時の日本は呪術的な治療が少なからず行われており、ここにイエスの名のもとにバテレンの献身的な介護が人々に浸透していった。ハンセン病や呪われた人々に手を差し伸べたイエスの思いが、キリシタン増加につながったことは間違いない。最後の場で取り乱さず落ち着いて死を迎えるという武士道精神と殉教の親和性があるというのも腑に落ちた。2017/07/23
courage
3
品切れ重版予定無しの為、古本より入手。原作の沈黙、映画の沈黙サイレンスの参考に最適本。2017/02/27
デューク
3
秀吉の時代から家光の時代まで、日本のキリスト教徒がいかに弾圧され、殉死者を出していったかの記録。ヨーロッパの宣教師たちにとっては、日本は世界で唯一「殉教」できる場所であったため。日本人にとっては、武士道のメンタリティを発揮できる機会であったため。多くの人々が驚くほど嬉々として殉教していった。「殉教」という日本社会に異質な存在を通し、日本人の死生観を浮き彫りにする一冊。2016/02/01