内容説明
ジャーナリストたちによって簡潔にまとめられ、編集された情報でなければ、私たちは日常生活の中で、情報を得るために時間を割くことはできない。しかし、さまざまな情報源が、あるときはメディアを支配し、あるときはメディアを騙しながら、真実から程遠い情報を受け手にタレ流してきた。権力者も常に、ジャーナリズムを利用して、さまざまな情報操作・世論調査をしようと企んでいる。―「編集された」情報は、ときとして真実を隠蔽し、受け手の感情を操作する。本書では、その典型として、北朝鮮に関するメディア報道を取り上げ、「事実」が「真実」となり、“世論”となるからくりを明らかにしていく。
目次
序章 「情報操作」されるメディア
第1章 帰国運動とは何だったのか
第2章 記者たちは何を報じてきたか
第3章 議員訪朝団は何をしたのか
第4章 「テロ国家」のメディアコントロール
終章 そして歴史は繰り返されるのか
著者等紹介
川上和久[カワカミカズヒサ]
1957年東京都生まれ。東京大学文学部社会心理学科卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東海大学文学部助教授を経て、現在、明治学院大学法学部長
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感想・レビュー
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白義
11
戦後長く、過度の理想主義と北朝鮮への忖度によって塗り固められてきた北朝鮮報道の暗黒史、その検証を行った労作。北朝鮮帰国運動での、現実を顧みない帰国熱の扇動、地上の楽園というイメージの裏側の現実を見ることが出来ないメディアの報道と、それを利用した北朝鮮の思惑、そして新聞報道が冷却化した時期になっても、北朝鮮側の主張を繰り返す拡声器のようになってしまった議員訪朝団の歴史と、まさしく日朝関係を歪めた北朝鮮報道の裏面史。北朝鮮を美化した寺尾五郎に対する、帰国した青年の「だまされて一生を棒に振った」という叫びが重い2018/06/16
du
2
在日朝鮮人の帰還運動などに関して、当時のメディアの報道の仕方を批判している。書籍の中では日本の報道陣(読売も含め)が当時の北朝鮮の政治・経済を過度に美化し、帰還運動にも肯定的だったことを問題点として挙げている。確かに筆者の意見は分かるが、当時の帰還運動は韓国が帰還運動に消極的だったこともあり、そもそものニーズがあった。また、こういった批判は何か事後的な批判になっており、誰でも当時は予想もできず、誰でも現在なら批判できるような気がした。2011/09/03
undine
1
ありもしない後ろめたさを北朝鮮ににつけ込まれて結果的に北朝鮮の代弁者となったメディアや政治家たちの醜態を浮き彫りにしている。社会党だけでなく、自民党の金丸訪朝団のグロテスクさは、ラングーン事件、大韓航空機爆破事件の後でさえもなお北朝鮮に迎合する勢力の根強いことを示している。結局、2002年に金正日が拉致を認めて謝罪したことでようやく北朝鮮に対して遠慮なく批判できるようになったが、北朝鮮だけでなく韓国、中国にも言いたいことを言えない状況が続いている日本の異常な状態はいつまで続くのかと暗澹たる気持ちになる。2024/12/09
湘南☆浪漫【Rain Maker】
0
近くて遠い国…。2017/06/11
アブストラ
0
戦後日本の新聞による北朝鮮についての報道を一覧できる。個人的に収穫だったのは1989年3月30日の竹下首相による謝罪発言。この直後に慰安婦(デマ)問題が出てきた、ということは…。2017/02/09