出版社内容情報
本書は、瑩山紹瑾(けいざん じょうきん 1268-1325。日本曹洞宗開祖の道元禅師から第4世の法孫。能登總持寺の開山)禅師の主著『伝光録(でんこうろく)』を現代語訳して、注解を施したものです。
瑩山禅師は越前(福井県)出身の禅僧で、13歳のときに永平寺二祖の懐弉(えじょう)禅師に就いて得度したのち、宗派の壁を越えて仏法を求め修行を重ねるとともに、後進の育成にも力を注ぎ、教線が拡大していく曹洞教団の礎を築いた人物です。
その瑩山禅師の主著が『伝光録』(2巻)で、釈尊から自身の師である懐弉禅師までの「1仏+インド28祖+中国22祖+道元禅師+懐弉禅師」=計53人の仏祖を取り上げ(全53章)、お一人お一人にまつわる、①公案、②悟りのきっかけ、③その解説、④偈頌(詩で讃える)の要素でもって各章が構成されています。その筆致は、時空を超えて〈ローソクからローソクへ灯火をつないでいくように〉仏法を伝えてくださった53人の仏祖への敬意に満ちたものとなっています。
日本の曹洞宗においては、道元禅師と瑩山禅師を「両祖」と尊称して同格に位置づけています。なお、その禅風は、道元禅師の「厳しさ」に対して、瑩山禅師には「温かさ・優しさ」が感じられると著者は評します。そこには、「正伝の仏法」を継承するため出家僧侶の育成に努められた道元禅師に対して、瑩山禅師が、室町期以後に在家信者が増加していった曹洞教団を前に「正伝の仏法」を一般の人たちにも解りやすく伝えていこうとされた〈信者目線〉の姿勢があったのではないかと推察されます。
道元禅師ほどには知られていない瑩山禅師の思想や仏教観を、主著の読解によって学ぶことを通して、仏教に関心を寄せるわたしたちに、仏教が〈いま、ここ〉に伝えられているということの意味を教えてくれる一冊です。
【目次】
序 言
凡 例
釈迦牟尼仏
第一祖 摩訶迦葉尊者
第二祖 阿難陀尊者
第三祖 商那和修尊者
第四祖 優婆崛多尊者
第五祖 提多迦尊者
第六祖 弥遮迦尊者
第七祖 婆須密多尊者
第八祖 仏陀難提尊者
第九祖 伏駄密多尊者
第十祖 脇尊者
第十一祖 冨那夜奢尊者
第十二祖 馬鳴尊者
第十三祖 迦毘摩羅尊者
第十四祖 龍樹尊者
第十五祖 迦那提婆尊者
第十六祖 羅ゴ羅多尊者
第十七祖 僧伽難提尊者
第十八祖 伽耶舎多尊者
第十九祖 鳩摩羅多尊者
第二十祖 闍夜多尊者
第二十一祖 婆須盤頭尊者
第二十二祖 摩拏羅尊者
第二十三祖 鶴勒那尊者
第二十四祖 獅子〔菩提〕尊者
第二十五祖 婆舎斯多尊者
第二十六祖 不如密多尊者
第二十七祖 般若多羅尊者
第二十八祖 菩提達磨尊者
第二十九祖 〔神光大祖慧可〕大師
第三十祖 鑑智〔僧サン〕大師
第三十一祖 大医〔道信〕禅師
第三十二祖 大満〔弘忍〕禅師
第三十三祖 大鑑〔慧能〕禅師
第三十四祖 弘済〔青原行思〕大師
第三十五祖 無際〔石頭希遷〕大師
第三十六祖 弘信〔薬山惟儼〕大師
第三十七祖 雲岩〔曇晟〕無住大師
第三十八祖 洞山〔良价〕悟本大師
第三十九祖 雲居〔道膺〕弘覚大師
第四十祖 同安〔道〕丕禅師
第四十一祖 後同安〔観志〕大師
第四十二祖 梁山〔縁観〕和尚
第四十三祖 大陽〔警玄〕明安大師
第四十四祖 投子山〔義〕青和尚
第四十五祖 芙蓉〔道〕楷禅師
第四十六祖 雪峯〔子〕淳和尚
第四十七祖 悟空〔清了〕禅師
第四十八祖 天童〔宗〕カク和尚
第四十九祖 雪竇〔智〕鑑和尚
第五十祖 天童〔如〕浄和尚
第五十一祖 永平〔道〕元和尚
第五十二祖 永平〔懐〕弉和尚
『伝光録』主要参考文献
瑩山紹瑾略年表



