内容説明
今宵は、魔夏の夢をお見せしましょう。したたる緑。紺碧の波。原色の花のように咲き乱れる熱帯の幻夢を。この魔法に満ちた世にも不思議な島国で…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
39
真夏に再読。南国の、噎せかえるようなねっとりとした甘い空気に誘われた。鬼畜な倉阪鬼一郎さんからスウィートな北原尚彦さんまで。グロテスクでいて、それでも甘い(甘過ぎる)物語が多くて南国を満喫させてもらった。2019/08/03
あたびー
36
田中哲弥「猿駅」を読もうと。毎日夏の灼熱の太陽と蒸し風呂のような湿気に当てられながら読むのには余りにも似合いすぎる。多くの作品がドロドロ、ネチャネチャ、ビチャビチャを含み、粘液をかき分けながら読了した。「猿駅」もその一つである。曰く「無人の改札を出ると、そこはもう一面の猿」。猿を踏まずには歩けない。クトゥルフ神話と日野日出志「蔵六の奇病」がワンプレートで供されるような田中啓文「オヤジノウミ」もドゥルドゥル版「赤死病の仮面」井上雅彦「デザート公」も粘度100%でした。空山基さんのイラストはスッキリ硬質。2024/08/11
ひょろ
3
南洋の華やかでかすかに腐敗のにおいがするホラーが集まった。 何といっても田中啓文氏の「オヤジノウミ」だろう。 グロさ、気持ち悪さは特級。2019/06/25
MADAKI
2
【爛熟した熱帯の怪奇】異形コレクション、第1シリーズというべき廣済堂出版時代のものは1作当たりの文章量が比較的短い。グロテスクで即物的な厭らしさがある作品が多い。奥田哲也「みどりの叫び」倉阪鬼一郎「屍船」朝松健「泥中蓮」:グロめの怪物譚。田中啓文「オヤジノウミ」:例によってグロ全振り。別に面白くない。篠田真由美「Flora」速瀬れい「不死の人」:ゲーテと中島敦に題を採った幻想譚。菊地秀行「黒丸」:大オチとして最高。なるほど、南の島ではそういうことになってるのね…。2019/10/22
込宮宴
2
トロピカルときいて真っ先に沖縄を想像してしまったが、そうではなかった。熱帯、密林、未開、極彩色、これらがそろって初めてトロピカルといえるのか。作品の中では田中啓文「オヤジノウミ」が衝撃的。田中哲弥「猿駅」も後を引く。2012/05/17