内容説明
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため、多くのユダヤ人がポーランドに隣接するリトアニアに逃げ込んだ。それは逃げ道を失った彼らが日本経由の脱出ルートに最後の望みを託し、日本の通過査証を求めてのことだった。このとき首都カラナスの日本領事館にはこの歴史ドラマの主人公杉原千畝がいた。本書では、このとき発給された「杉原ビザ」を手にした多くのユダヤ人に救いの手を差しのべた、福井県敦賀や神戸の人々、JTBや日本郵船の職員など、知られざる日本人たちの存在をクローズアップする。
目次
序章 一本の電話
第1章 知られざるJTBの貢献
第2章 アルバムに残された写真
第3章 人道の港敦賀
第4章 スギハラ・チルドレンを訪ねて
第5章 ユダヤ残影―1941年の神戸
第6章 日本郵船が果たした役割
終章 氷川丸抒情
著者等紹介
北出明[キタデアキラ]
1944年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。66年慶應義塾大学文学部仏文科卒、国際観光振興会(現・国際観光振興機構=JNTO)に就職。ジュネーブ、ダラス、ソウルの各在外事務所に勤務。98年国際観光振興機構コンベンション誘致部長。2004年JNTO退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
13
戦乱のヨーロッパから逃れてきたユダヤ難民の渡航の世話をした人々の功績を明らかにしたいという熱い思いで、ゆかりの土地(敦賀、神戸)や生き延びたユダヤ人の人々を訪ね歩き、証言や資料を集めたドキュメンタリー。最後に登場する客船の料理人の方の話が具体的で心打たれた。なお、本書刊行時には神戸におけるユダヤ難民に関する証言や資料はほとんどなかったようだが、神戸市の呼びかけで市民から情報が寄せられ、2017年春に神戸市史の紀要にまとめられた。こちらによれば、神戸の人々は同情的に受け入れていたように見受けられる。2017/06/16
都人
3
杉原千畝氏に関心があり、昨年生まれ故郷の岐阜県八百津町にある記念館を訪問したことがある。本書でも紹介されているパスポートも拝見した。この本は「ヴィザ」を取得したあとの「ウラジオストック」出航から敦賀、神戸、横浜からアメリカ入国までの経過をえがく。シンドラーと同じだ。2012/08/15
ポポロ
2
ビザを発給した杉浦千畝だけでは人々を救いきることはできないというのはそのとおりで、輸送に関わったひと、彼らを受け入れたひとがいたというのは興味深い着眼点だった。 人道のためという意識がどれだけあったかは分からないが、人々のために手を差し伸べたひとがいたことを誇りに思う。一方で著者の思い入れのあるひとへの拘泥や、想像(なぞのポエム)が多く、情感豊かすぎる文章だったのは残念。「なんと」という表現が数箇所に見られたが、 読者はその感動を共有していない。とはいえ、知らなかったことを知ることができたいい本だった 2019/05/04
wearnotequal
2
命のビザが使えるよう陰で支えた人たちと実際にビザに恩恵を受けた外国人を描く。外務省が外交資料館、郵船が歴史博物館を持っていることをこの本で知る。筆者の取材熱意にも感銘。2013/12/30
どんぐりいっこ
2
杉原千畝の書いたビザが無ければ助からなかった命ですが、船の手配、日本滞在時のお世話、次の国への交通の手配と沢山の協力があっての事だと改めて知らされました。