内容説明
平成23年3月に発生した東日本大震災で、私たち日本人は、地球レベルでの複雑な大地の動きに打ちのめされるという経験をした。しかし私たちはまた、この複雑きわまりない大地を相手に敢然と戦いを挑んできた歴史も持つ。本書では、世界的な難工事であった新潟県の北越急行ほくほく線鍋立山トンネルの工事記録から、技術者たちの苦闘とそれを乗り越えた技術力、人間力をクローズアップする。
目次
序章 豪雪地帯の高速鉄道
第1章 日本の鉄道トンネル
第2章 トンネルの造り方今昔
第3章 丹那トンネル―湧水と断層との16年間の苦闘が技術を進歩させた
第4章 鍋立山トンネル―トンネル・ボーリング・マシンも受け付けない膨張性地山との戦い
第5章 日本の地質の特徴―地質学基準と地質年代
終章 思い出のトンネル屋たち
著者等紹介
峯崎淳[ミネサキジュン]
作家。1937年札幌生まれ。1962年東京大学文学部イギリス文学科卒。酒造会社のコピーライターを皮切りに、日本語教師、翻訳業、フリーランス・ライターなどさまざまな仕事を経験。群馬県に移住した後、海洋冒険時代小説『海の密謀』、『大慾・小説河村瑞賢』をいずれも講談社から出版(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コカブ
1
著者は作家だが、「建設業界」という業界誌でトンネルに関する連載を持った事がトンネルについての文章を書く縁になったようだ。構成としては、「黒部の太陽」に近い感じだった。複数の技術者達に焦点を当てて、プロジェクトを描いていく。本の内容は、ざっとトンネル掘削技術を解説してから、丹那トンネルの工事の苦労、続いて鍋立山トンネルの工事の苦労を描く。前述のように、著者は技術者ではないため、やや技術者達の苦労を描いて終わっているようにも思える。NATM工法(新オーストリアトンネル工法)の解説は分かりやすかった。2013/11/10
rbyawa
0
e160、一時地下鉄の本を読んでいたので技術的にも少し通じるところがあり(地圧などに関してはだいぶ違うんだろうけどね、トンネル断面や地下水事情はかなり共通してた感じ)、技術面に興味がないわけではなかったもののどちらかという東海道線の付け替え工事前後の状況の変化などに関して読みたかったので、そういう意味だとちょっと足りなかったかな。ただ、もともとトンネルの記事を書いていた門外漢の人を交通新聞社が一本釣りしたと聞いて納得、それで若干気を使っていた節があったのかもなぁ。工事者の側に立った視点なのでこれはこれで。2014/06/09
morelemon
0
丹那トンネルと鍋立山トンネルを中心とした鉄道トンネル工事の苦労についてまとめられた本。各工法についても記述されておりわかりやすく読むことができた。2012/02/11
ゆの字
0
新幹線の車内で読む。本書で取り上げられているトンネルは難工事だったというのは知っていたが、まとめられたものを読むと山の凄さ、それを克服した技術者の不屈の意志に(技術者の端くれとして)感嘆する。2011/10/31