内容説明
上越新幹線は東北新幹線と同時開業する予定だった。しかし建設中の1979年、群馬県内の高崎駅~上毛高原駅間にある全長1万4830メートルの中山トンネル内で、日本トンネル建設史上最悪といわれる出来事が発生。その結果、開業は大幅に遅れ、さらには高速の新幹線がスピードダウンせざるを得ない半径1500メートルのカーブがトンネル内に残された。当時の建設担当者が語り残す苦闘と真実のドキュメント。
目次
中山トンネルで上越新幹線がスピードダウン
トンネル水没と奇跡の生還
上越新幹線建設スタート
立坑を抱えた中山トンネル
立坑掘削に4年
中山トンネル工事を直接指揮
工事被害の拡大
再度水没
ルート変更の決断
中山銀座の出現
坑内湛水の排除と再入坑
トンネル貫通に向けて掘削再開
トンネルの慣性
中山トンネルが残したもの
2009年の秋
著者等紹介
北川修三[キタガワシュウゾウ]
1948年石川県生まれ。京都大学理学部地質学鉱物学科卒業。1970年、日本鉄道建設公団(現、鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に入社。3年弱の青函トンネル勤務を経たのち、トンネル技術者として上越新幹線中山トンネルをはじめ全国の鉄道トンネルの建設に携わる。2002年公団を退社、引き続き建設コンサルタント会社に勤務してトンネル建設に情熱を注ぎ、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おいしゃん
28
上越新幹線乗車のお供に、上越新幹線の本でもと選んだが、1つのトンネルの掘削を描いた、ものすごくマニアックな本だった。技術的な話に終始し、素人にとっては、トンネル1つ掘るのも大変なんだなあとしか思えなかった。2021/04/14
tkmt
3
トンネル工学の導入として読んだ。中山トンネルでの施工が注入工法の工学的な先駆けであること、現代のトンネル掘削工事においては地質が重要な要素であることが強く記憶に残った。2019/03/24
ばな
3
新幹線のトンネル工事に焦点化した本。トンネル工事がいかに大変かが素人の自分でもよくわかり大変面白かった。トンネル一つ一つにドラマがあると言っても過言ではないのだ!
でね
2
上越新幹線に乗ってるとトンネル内で減速することでお馴染みの中山トンネル。その貫通に現場としていた方の手記のような本。技術的な話も多いけど、それだけではなくいかに地元の方と折り合いをつけていったのかという人間ドラマとしても読める。にしても、山の中にでっかい水の塊があって、それをつんつくしてトンネルを掘るような難しさに思いを馳せるのだった2023/08/01
たけふじ
2
プロジェクトXのようなノンフィクション。上越新幹線に乗ったことはあるが、中山トンネルで減速していることは知らなかったし、これだけの難工事があったことも知らなかった。そもそもは地質調査が雑…というか十分に行われなかったところから、二度にわたる出水事故にルート変更が起きている。転ばぬ先の杖というが、まさにその通りの事例だし、その後のトンネル事業に生かされているというのを読んで安心した。技術の話が多いが、人と人のつながりもあって完成したトンネル。最後のシーンがよかったです。2018/04/28