出版社内容情報
身近に点る火をめぐる夢想は知識を厳しく斥け宇宙の本源へ向う極限の想像力論。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
81
私は風に吹き消された蝋燭の焔。生きる重圧に押し潰された心のゆがみ。この世に芽吹くことの叶わなかった命。ひずんでしまった心。蹂躙されて土に顔を埋めて血の涙を流す命の欠片。そう、そうした一切さえもが神の眼差しの向こうに鮮烈に蠢いている。 蛆や虱の犇く肥溜めの中に漂う悲しみと醜さ。その悲しみも醜ささえも、分け隔ての無い神には美しいのだろう。2007/06/27
roughfractus02
8
『夢想の詩学』の読者なら『火の精神分析』『火の詩学』で男性的なle feuを語った著者は本書で女性的なla flammeを語るかに思えるだろう。物理的時間に沿って生滅する火に想像力の儚さを見出した著者は、本書で想像力を呼び起こす生命の「表徴」として焔を心理的に扱う。蝋燭に灯り、空(気)と混淆する焔とそれを見る者が一体となる瞑想的場面を芸術作品に見出す本書は、明白な意味よりも洞窟内で揺らめく焔のように曖昧な隠喩が思想だった太古へと詩人達を誘う。著者によれば、焔に揺らめく生きた闇こそが想像力を呼び覚ますのだ。2024/11/10
雁林院溟齋居士(雁林)
2
フランス科学認識論初期の代表者バシュラールの遺作であり、彼の後期の詩学的著作の一つ。大変詩的な魅力に充ちた素晴らしい書物である。蠟燭の焔、ランプの焔を主軸にして、ノヴァーリス、クローデル、ダヌンツィオ、そして彼が最も愛するというジャン・ボスコ等実に多彩で豊富な文学作品を引用しながら、そして著者自らも夢想しながら、夢想の恒常的な法則を探り、そこに想像力の形而上学を見る。直立するもの、上昇するものとしての焔に、「焔としての花」を重ね、生成の詩的コスモロジーを詩的価値のみ、夢想のみによって語るのである。2013/04/04
かとう あき
1
客観的に観察し、多様性を作り与え世界に近づくのではなく、主観的に存在に沈み、その深みから共感を得ることで世界を広げる2014/09/23