内容説明
絵画は批評の中に、批評は絵画の中に入り込む!現代フランスの極めて独創的な美術評論家によって書かれた、16世紀スペインの画家グレコをめぐる繊細にして特異なる美術エッセー。タブローの眠りは形而上学的小説=評論の光の往還によって逆照射される。
目次
類似のマチエール=似ていることの根拠
ドラマの場=事件の現場
著者等紹介
シェフェール,ジャン・ルイ[シェフェール,ジャンルイ][Schefer,Jean Louis]
哲学者、作家、美術・映画・写真及び文芸批評家。1938年パリ生まれ。1969年にデビュー作で美術理論家として脚光を浴び、「第一期構造主義」時代に視覚芸術記号論の領域で活躍。70年代にパリ第一、第八大学で教鞭をとった後、81年からは文筆、講演、ヴィーコの復刻・出版、洞窟芸術の調査などに専念。ウッチェッロの研究やシャルダン論をはじめ、多くのエッセーを執筆。1995年英国でポール・スミス編・訳の選集『謎の身体=物体』がケンブリッジ大学出版会より刊行される。1997年からポール社より影像論、絵画論、映画論や『日記』を精力的に発表
與謝野文子[ヨサノフミコ]
1947年生まれ。詩人・批評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メルセ・ひすい
4
14-86.87 写真多数『ラオ・コーン』!こそ真価。「描写的論理」 内面的スピスピ霊性!「夢の中の光」「舞台装置でない光」なのだ。非普遍的な美術への愛なのだ。あくまで図像の法的・神学的・象徴的地位を追求した描写の水準の写実性のなかに詩的分析的あるいは形而上学的な内容内容が組み込まれている。絵画は批評の中に、批評は絵画の中に入り込む。現代フランスのきわめて独創的な美術評論家によって書かれた、16世紀スペインの画家グレコをめぐる、繊細にして特異なる美術エッセー。2011/04/04
エンピツ地獄
2
グレコの色彩を街に見立てた『アウステルリッツ』のゼーバルトを『調書』のクレジオが観想するみたいな、という訳のわからん形容で申し訳ないけど、そういう読み心地が素晴らしいです。客体の只中に換喩としての主観を開いていく作業工程を辿る読者にとっては、その運動が倒立して訪れるという感じ。「ただ見ているだけだと思いこんでいるものがつくりだしている網や鳥もちに引っかかっている形姿なきこのわたしを除いてしまったら、エル・グレコは何を表象しているというのか」。2015/11/29
おとや
1
絵画の解説のようでもあり私小説のようでもあり、境界が判然としない。非常に読みづらく、訳の問題かとも思ったが、訳者による解説文は読みやすく面白いので多分そもそもの仏文が難解なのだと思う。せいぜい半分くらいしか理解できていないような気はするが、理解の及ぶ範囲では、「似たもの」と「光」をキーワードにエル・グレコを読み解こうとしているようだ。2014/02/12
ロバーツ
0
絵画論というよりもエッセイに近い感じ。『オルガス伯爵の埋葬』の分析、解釈はさすが。2013/02/16