内容説明
ジャーナリズムの「黒魔術」を告発するクラウスは、ベンヤミン、カネッティ、ムージル、ヴィトゲンシュタイン等に絶大な影響を与え、その思想的文学的営みによって「スペクタクルの社会の批判」(ドゥボール)を先取りする!本書はクラウスの中心的思想を集約するエッセイ集である。
目次
黙示録
勝利者の像
印刷と転載
私を黙殺する権利と義務
地震の後で
ハラキリと文芸欄
ライオンの頭、あるいは技術の危険性
ハイネとその顛末
ハイネとその顛末 あとがき
二つの生き方のあいだで
ネストロイと後世
ヨーロッパ文化の到来だ
ニグロ
白人女と黒人男
あいつぁユダヤや労じゃねえか!
貴族との交際への憧れ
フランツ・フェルディナントと才覚者たち
黒魔術による世界の没落
著者等紹介
山口裕之[ヤマグチヒロユキ]
1962年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科後期博士課程修了。2001年、学術博士(東京大学)。ドイツ文学・思想、メディア理論。現在、東京外国語大学准教授
河野英二[コウノエイジ]
1963年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。近現代ドイツ・オーストリア文学およびパフォーマンス論。現在、早稲田大学・中央大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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qbmnk
1
面白かった。約1世紀前の作品だが諷刺は現代にも通じる。言及されていることの時代背景が分からなくても、鋭い諷刺には力がある。ドン・キホーテを思い出した。日本語で読んだので部分的な理解しか得られなかったが、それでも考えさせられた。ジャーナリズムと世論による思想の退化は破滅を招くことが指摘され、実際に2度にわたる大戦を経ても黒魔術は衰えることを知らない。むしろ現代は黒魔術に支配されたとも言える。母国語で読める人はどう感じるのか聞いてみたい。2019/10/26
STO
0
ハイネとその顛末2022/11/10
毒モナカジャンボ
0
尋常ではない自信に満ち溢れた傲慢不遜で選り抜かれた文が次から次へと現れるので疲れる。19世紀末から20世紀初頭のウィーンにはびこる新聞、近代技術、装飾などの瘴気。虚偽を生み、自然を害する全ての敵に対して容赦ない筆が飛ぶのだが、アフォリズムの域にまで猛烈に濃縮された文章の連なりはかなり難解になる(クラウス自身一つのアフォリズムを生み出すためにどれだけの長文が必要かという類のことを言っている)。まあ僕のような愚者が自分の本を読んで「わかった」ということを筆者が望みはしないだろう。真善美なるもの・言葉への愛。2019/12/12