出版社内容情報
英国庭園の現在と過去を思想と実践から検証し、環境と人間の未来に新たな視点を提供する場として庭園史・文学史を読み直す議論を展開。
第1章 英国庭園の特徴
Ⅰ 英国庭園とは何か
「英国の庭園」とは何か
英国庭園とは英国にある庭か/「イギリスらしい庭」
「自然らしさ」の庭
古典主義様式の庭/「イレギュラー」要素
英国式「風景庭園」
「風景」とは何か/囲われていない庭
Ⅱ 英国式庭園の特質--ラウシャム・パーク庭園
ウィリアム・ケント
イレギュラーな庭園
蛇行する川/アポロ像の視線/曲水の宴/ヴィーナスのゆらぎ/庭園の散策者/「ケントは塀を飛び越えた」
庭と共に生きる
体験重視の認識論/生の讃歌としての庭
Ⅲ 英国式庭園のひとつの極致--ブレニム・パレス庭園
ランスロット・ブラウン
ケントの伝統的部分/ブラウン登場
小細工を排した大きな「自然」
戸口まで芝草を/石橋は残った/植林の魔術/湖面のアイ・キャッチャー/散策者の足どりと流動する視点/「迷い子」への報奨
Ⅳ 小空間の英国庭園
新しい英国庭園
20世紀の庭
イギリス人よりイギリスらしく--ヒドコット・マナー庭園
アマチュアの庭園造り/変化のある小空間/直線とイレギュラーさ/自然主義への傾斜/色
Ⅲ エデンへ
風景庭園の輝ける星々
「囲い込み」政策/財産形成途上人種/風景庭園の初期作/「絵のような庭」を求めて/絵を越えた庭
風景庭園への批判
風景庭園は「陽の世界」/闇に向かう時代の感性/レプトン登場/ラウドンの六千万語/イギリスより早いイギリス式市民庭園
野生の庭園
ウィリアム・ロビンソン/鉢植え植物
第3章 英国庭園が現代に問いかけるもの
Ⅰ 植物と人間
縮小する庭
鉢植えは昔からあった/謙虚さの庭/温室の発生/凶暴な温室
自然への意識
「焚き火」の風物詩を超えて/植物に注がれるまなざしの行方/ゲルマン系の樹木信仰文化
Ⅱ 環境と人間
「公共」という概念
空間の他者,時間の他者/「癒し」と「救い」/「テラリウム」から「コスモスフィア」へ/ナショナル・トラスト/「公共」部分を広げる
新しいエデン
「環」の呪縛/アダムとイヴが知ったこと/「アフリカのイヴ」/荒野をエデンにする/エデンは実在したのか/荒野へ帰る/環境に向かう歩み
関連年表
BIBLIOGRAPHICAL NOTES
さくいん
内容説明
自然をそのまま生かし、果てしなく開くことを志向する英国庭園は、英国の政治史・思想史・文学史とからみあいながら発達してきた。そして現在、庭園のあり方は、限られた地球でいかに人間が自然環境とともに生きていくかという問題に視点を提供する。
目次
第1章 英国庭園の特徴(英国庭園とは何か;英国式庭園の特質;英国式庭園のひとつの極致;小空間の英国庭園)
第2章 英国庭園の成り立ちと展開(エデンとパラダイス;パラダイスから;エデンへ)
第3章 英国庭園が現代に問いかけるもの(植物と人間;環境と人間)