出版社内容情報
エリザベス1世女王治世下のロンドンで、当時の民衆とともに、天国も地獄もたっぷり味わったに相違ないシェイクスピアをリアルタイムに描き出す。
内容説明
中世的世界観とルネサンス的世界観のせめぎ合うイギリス史上稀有な過渡期に、快楽と商売と犯罪の都ロンドンでシェイクスピアは生き、そして劇を書いた。
目次
変動の世相とシェイクスピア
1 女王と民衆と劇作家と
2 シェイクスピア劇と民衆観客
3 マージナルな者たちの視点―『ヘンリー六世』三部作
4 日常世界と民間神話―『夏の夜の夢』を中心に
5 民衆の伝統と同時代ロンドン―フォルスタッフ
6 王子にして道化―ハムレット
7 シェイクスピアと民衆社会―フォーマン、オートリカス、プロスペロー、そしてキャリバン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
9
シェイクスピア作品においては民衆はしばしば嘲弄や軽蔑の対象になってる。しかし演劇を支えた観衆の多くは民衆であったから、彼らにも喜ばれないと売れない。当時の演劇というのは特別な芸術であったらしくて、王侯貴族から庶民まで同じものを楽しんだらしい。つまり誰にでも開かれてる。この公共性がシェイクスピア作品を宇宙的にしたんではないか。彼が民衆に寄り添ったというよりも、王侯貴族から庶民までが楽しめるものを作らないとならないから、多数の視座を包摂する小宇宙を再現することになった。いずれの視座も特権的地位を与えられない。2023/03/19