出版社内容情報
「あの人はついに本性を現したのです」――英国小説はユウワクで幕を開ける。美しく無垢なメイドは、情欲に満ちた若主人に誘惑されて監禁され、貞操を守るための必死の駆け引きが始まる……英国古典である書簡体小説の新訳。
英国小説の出発点といわれる作品のひとつ。美しく無垢なメイドが、紳士面をして近づいてきた若主人のセクハラにあい、監禁されてしまう。貞操を守るための必死の闘いを、登場人物の手紙のみで綴り、そのスリリングな展開は今なお十分に面白く読める。大胆な現代風の新訳で刊行する。
内容説明
情欲に満ちた若主人に誘惑され監禁されてしまった美しく無垢なメイド、パミラ。孤立無援のなかで貞操を守るための必死の駆け引きが始まる…。英国の古典として、そして世界の小説史のなかでも不動の位置を占める書簡体小説の新訳。
著者等紹介
原田範行[ハラダノリユキ]
1963年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了。博士(文学)。現在、東京女子大学教授。専門は近代英文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
54
美少女パミラが、若主人の再三の口説きを跳ね除け貞操を守り、最後には若主人を改心させた上に玉の輿に乗る話。二巻以降の若主人の改心ぶりは、『自負と偏見』のダーシー氏を思い出させる。一方、一巻では悲劇的ヒロインだったパミラが、二巻に入るとちょっとうぬぼれ始め鼻が高くなっていて、かたくななまでに操を守ろうとするパミラより、この二部に入ってからのパミラの方が彼女の(女性の)本音が見事に表れているように思う。この話、結局パミラが上手く若主人を手玉にとって玉の輿に乗った話だとするブラック・パミラ説もあったようだ。2016/03/27
のっち♬
40
召使の美少女が身に降りかかる事件を両親に書き送る形で進む書簡体小説。下心を抱いた若主人に軟禁されてからは日記に。「私は絶対に、いかなることがあっても彼の誘惑に負けてはいけない」書簡検閲に強姦未遂と、エスカレートする彼の横暴に耐えながら機知を働かせて頑なに貞節・淑徳を守る主人公の機微が、運命の浮き沈みに添って巧みに描かれている。攻勢は臨場感があり、特に前半は度重なる危機と苦難で切迫する。主人公を筆頭に登場人物は饒舌揃いで生命力が溢れ、飾り気のない細かな生活描写と共に、どこかコミカルなメロドラマが展開される。2017/12/21
Kouro-hou
19
1740年のベストセラー、近代小説の起源と言われたりもする書簡体の教養小説。当時で5刷1万5千部売れたとか。メイド奉公中のパミラさん(15)は、奥様の覚えもめでたく色々知識教養を身につけた心清く鉄壁の貞操観念を誇る美少女。ところが奥様没後、息子のB様(イケメン&大富豪)が無理矢理迫ってくるのです、というお話。当時は心正しいものは外見も美しく、そうでない者は見た目が化物という概念でして、つまりB様は結局のところ良いイケメンなんですよ。中盤で二人はすっかり意気投合、そこから先は夫婦の心得的教養小説に。ううむ。2015/12/01
viola
14
以前、挫折した『パミラ』。新訳が出たということで楽しみにしていました。やたら「タイヘンよ」などと「ヘン」や「タイヘン」だけがカタカナなのが気持ち悪いですが、翻訳はとても読みやすい!!ハードカバーで800ページ超えとかなり長いのですが、これがもう期待以上にめちゃくちゃ面白い。パロディが多数存在したことも(読む前のあらすじを知っている段階から)納得の内容なんだけれども、だからこそ面白い。全てのラブストーリーの源泉は、ここにあ・・・・・・・るのかもしれません。ああもう面白すぎますよ、これ。2012/06/21
azimuth
7
前半:緊張→後半:弛緩。現代の感覚だと「ペース配分!」と思ってしまう。前半にストーリー、後半に道徳説教を詰め込んでる?/キリスト教圏は基本的に「罪を悔恨したら赦す」という文化だと改めて。/書き物を読む・読ませることが登場人物の好意の契機になっている。読者に書き物をすることを奨励している?/淑徳は、それが脅かされているときにのみ発動する美徳なのか。/wretched, wretched Pamelaな書簡パートより舌戦を繰り広げるパミラが好き。後半になるとその活発さが減退する。フェミニズム的批評も多そうだ。2012/02/05