出版社内容情報
大正期、労働力保全のため制定された健康保険法から新国民健康保険法制定をへて、現在に至る百年間の歴史を運動史の視点から辿る。日本の医療保険制度は第二次大戦前夜、総力戦体制に向け国家主導で成立したという通説に対し、本書は20世紀初頭、農山漁村や都市貧困者の救済として各地に生まれた「無産者診療」にその源泉を見る。この互助組織が後の国保普及の素地となり、健兵確保のための医療保険拡充等と相まって皆保険制度に結実したことを膨大な資料から描き出す。
1 はじめに
2 国保以前の医療利用組合による病院づくり
3 新渡戸稲造と賀川豊彦の思想と行動
4 国民健康保険法事始め
5 国保法はなぜつくられたか
6 大山鳴動に終わった戦時下医療制度改革
7 農村医療のパイオニア
8 結核の蔓延、保健婦が国保を支えた
9 戦時中の社会政策と保険医療の日英比較
10 戦時日本の皆保険、英国の国民保健事業
11 戦後の農村医療保健
12 戦後の国保再建
13 占領下の社会保険改革とワンデル勧告
14 ワンデル勧告に反発した米国医師会
15 ベヴァリッジ勧告の意義と人となり
16 社会保障制度審議会勧告と残された宿題
17 岩手全県皆保険実現のリーダー
18 国保直診一〇割給付の先達、岩手県日頃市村からの教訓
19 岩手県皆保険前夜の広域国保――もう一つの拡大給付
20 国保直営病院づくりと医師会の反発
21 皆保険前夜に描く国保の行く末の設計
22 失敗の始まり一九五〇年
23 皆保険への始動:岩手全県の国保普及達成
24 成立した新国民健康保険法
25 国民皆保険の評価
26 ポスト皆保険――岩手県沢内村国保の試練と課題
27 へき地国保直診医師の献身
28 岩手国保直診を支えた医師たちと「地域医療論」
29 医療制度改革への二つの答申
30 赤ちゃん取り違い事件と医療労働運動
31 四回の保険医総辞退運動
32 皆保険直後の患者受診行動
33 国保医療の先進村・町
34 住民皆保健に向かう二一世紀の行く手
戦後年表
あとがきと謝辞
前田 信雄[マエダ ノブオ]
前田信雄(元公衆衛生院社会保障室長)
内容説明
20世紀初頭、産業組合の「医療利用組合」が農民や貧困者への自主的救済事業として創設。旧国民健康保険法は国際的視点から制定されたが、産業組合がその普及の後押しをした。この本は、大戦中の国民皆保険国策、下からの組合病院づくり、広域国保10割給付、経済政策としての新国民健康保険法、国保直診の地域保健活動などの綾なす途をえがく。ベヴァリッジ勧告、日本占領軍のワンデル報告、社保審大内兵衛勧告など、膨大な資料文献を新しく読み解いた歴史分析書。
目次
はじめに
国保以前の医療利用組合による病院づくり
新渡戸稲造と賀川豊彦の思想と行動
国民健康保険法事始め
国保法はなぜつくられたか
大山鳴動に終わった戦時下医療制度改革
農村医療のパイオニア
結核の蔓延、保健婦が国保を支えた
戦時中の社会政策と保険医療の日英比較
戦時日本の皆保険、英国の国民保健事業〔ほか〕
著者等紹介
前田信雄[マエダノブオ]
『保健の経済学』(1979、東大出版会)『岩手県沢内村の医療』(1983、日本評論社)『保健医療福祉の統合』(1990、勁草書房)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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