内容説明
家の伝統、家父長制、ロマンティックラブ、核家族論から格差社会におけるポスト近代家族まで。日本型近代家族の謎を解きあかす。
目次
第1部 日本型近代家族(「近代家族」の形成;システムとしての近代家族;日本型近代家族の変容)
第2部 家族の近代と日本(家族社会学における「家」;家父長制をめぐって;核家族という問題)
著者等紹介
千田有紀[センダユキ]
1968年生まれ。2000年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、武蔵大学社会学部教授/博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
30
我々が昔から続いて来たと思い込んでいる「近代家族」なるものは、多くは明治以降に作られたものであるとの主張を展開しています。かつては大家族だった、夫婦は昔から同姓だった、といった数々のドグマも大間違いと喝破します。威勢の良いフェミニストの典型的な主張なのですが、どこか都合のよいデータだけを集めてきたように感じてしまいます。2018/04/12
ゆう。
30
全体的に少し大風呂敷な論調の点が残念でした。近代日本型家族はどのように形成され、今はどのような位置にあるのか論じられていたように思います。また歴史的に家族社会学が近代家族をどのように捉えてきたのかがまとめられていました。正直、あまり頭に入ってこなくて…。家父長制は超歴史的概念ではなく歴史的概念であることや家父長制と資本制がどのように結びつくのかという問題提起がなされていたりと考察する必要はあるなとは思いました。しかし、資本主義社会が資本蓄積のために家族をどう位置付けたのかという視点が重要だと思います。2017/09/16
壱萬参仟縁
20
全体的に、見た目ではあっさりとした書き方。 内容はヘビーな問題であるが。 パートタイマーと正社員の格差は、ヨーロッパで是正されるも、 日本では程遠い(45頁)。 ラジオニュースでは徐々に非正規も労組加入できるようなった、 とかいっている程度。 愛と性と結婚が一致しなくなったとしても、 結婚と生殖は強固(88頁)。 そうでなければ、結婚制度も陳腐化するであろう。 少子化はこの窮屈な(イエ)制度のせいかもしれない。 年収が少ないと結婚の可能性は減少する(108頁)。 2014/04/04
白玉あずき
14
「核家族」ですら消滅し個人が個として孤立しそうな現在。いまさら封建制・家父長制について述べられても、と思いながら読んでいたが、後半部分はしっかり時代について行っておりました。『無限の資本蓄積のための植民地がなくなった現在、資本蓄積のために必要とされている「植民地」は、女性、自然、他民族であるとするミースの立論は・・・・』 ははん、女性が輝く社会って、さらに女性の労働力を搾取する世の中なのか?と思った次第。女が社会参加しながら、幸せでいられる社会を想像できない悲しさ。身近なテーマなので思う所多。2015/08/23
駒場
9
「伝統的」と言われる家族像が近代家族に過ぎないという話についての本で、複数研究の蓄積をかなり詳細に紹介してくれているので学部生なんかはかなり重宝するのではないか。そもそも大家族同居が続いてきたというのもイメージに過ぎない、という軽い話から、女性を縛りがちな母性やロマンティックラブイデオロギーもかなり新しい概念であることを述べており、「普通」が息苦しいあなたに贈りたい。一方「母性」が登場した時にそれまで何の権力もなかった女性たちが家庭内権力の増大を理由にそれに熱狂した側面もあった指摘なんかはオモロ〜でした2022/09/22