生命学に何ができるか―脳死・フェミニズム・優生思想

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生命学に何ができるか―脳死・フェミニズム・優生思想

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  • サイズ B6判/ページ数 477,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784326652617
  • NDC分類 490.15
  • Cコード C3036

出版社内容情報

生と死の問題を全く新しい角度から考え直す。その営みを著者は生命学と呼ぶ。主なテーマは副題にある三つ。まず脳死について。最新の医学情報を織り込みつつ、「脳死の人」以来の思想が深められる。次に日本の生命倫理の出発点である1970年代のウーマン・リプおよび障害者運動のロジックを取り出す。中絶をめぐる女性・胎児・障害者の現実と権利が丁寧にフォローされる。そこにはまた優生思想の問題が色濃く貼りついている。国家によって民族の優秀性を保持するといった類の考え方はさすがに後退したが、個々人の選択に委ねられる優生思想は残っ

序 脳死との出会い

第一章 いま脳死を再考する
1 脳死の真実
2 脳死論の系譜
3 脳死の存在論

第二章 生命と他者──<揺らぐ私>のリアリティ
1 脳還元主義の生命観
2 パーソン論のリアリティ
3 パーソン論との対決
4 他者論のリアリティ

第三章 ウーマン・リブと生命倫理
1 ウーマン・リブとの出会い
2 優生保護法改正とは何だったのか
3 一九七二年の改正案とウーマン・リブの対応
4 性と生殖に関する三つの主張
5 七〇年代日本のフェミニズム生命倫理が提起したもの

第四章 田中美津論──とり乱しと出会いの生命思想
1 便所からの解放
2 否定される女
3 どん底からの自己肯定
4 エロスと生命
5 「とり乱し」と「出会い」
6 男のものの見方
7 田中美津との出会い
8 田中美津の生命思想

第五章 「暴力としての中絶」と男たち
1 中絶と自己決定権
2 可能性の殺人
3 暴力としての中絶
4 「責め」を引き受けること
5 「男たちの生命倫理」の提唱

第六章 障害者と「内なる優生思想」
1 優生思想とは何か
2 「青い芝の会」と「健全者幻想」
3 障害者と女性はなぜ対立したか
4 「内なる優生思想」は克服できるのか
5 予防福祉論と障害者共生論
6 選択的中絶のほんとうの問題点とは
7 女性には障害胎児を殺す権利があるのか
8 優生思想と闘うこと
9 いくつかの論点
10 優生学の新展開をどう考えればよいのか
11 「内なる優生思想」と生命学の可能性

最終章 生命学に何ができるか
1 生命学とは何か
2 悔いのない人生を生き切るために
3 生命世界の探究
4 生命学の方法論


あとがき
初出一覧
文献一覧

内容説明

生命世界を現代文明との関わりにおいて探り、みずからの生き方を模索する知の運動。

目次

序 脳死との出会い
第1章 いま脳死を再考する
第2章 生命と他者―「揺らぐ私」のリアリティ
第3章 ウーマン・リブと生命倫理
第4章 田中美津論―とり乱しと出会いの生命思想
第5章 「暴力としての中絶」と男たち
第6章 障害者と「内なる優生思想」
最終章 生命学に何ができるか

著者等紹介

森岡正博[モリオカマサヒロ]
1958年高知県生まれ。大阪府立大学教員。哲学・生命学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nbhd

13
「田中美津論」だけ読む。田中美津さんってすさまじいな、すさまじすぎるわ、「いのちの女たちへ」絶対読みたいわ。の、一方で、著者の森岡さんが美津さんの言葉を受け取って「男は女にどう向き合うのか」を書いたあたりの覚悟と迫力もすごかった。鉛筆で書き写したいくらいだ。森岡さんは、男の痛みを3つに分ける。①「男らしさ」に抑圧される痛み、②女に与える痛みを男が知った時の痛み、③女の痛みは男には結局わからないという痛み。こうした痛みに男はアワアワする、とり乱す。男は、このとり乱しを生きるしかない、と森岡さんは考えている。2021/02/16

ask_smmt

1
脳死や男性学のパートにはあまり惹かれなかったが、リブと青い芝の会の対立、および解消していない問題における論点の整理は明快で、勉強になった。2024/01/27

えぬ共同体

1
「いのち」に線を引き、「権利」としてそれを言い切る「生命倫理学」が無視してきた、脳死や人工妊娠中絶に際して揺らぎ、「とり乱す」「私」、そのリアリティを真正面から取り扱う「生命学」の理論的基盤の書。 特にウーマンリブの中心人物たる田中美津について論じた部分は必読。田中の生/性と「殺人」としての中絶を考え抜く極限的な思想と、それに男性として否応なく動揺し、自らのセクシュアリティを問い直す著者との対話は、本書を読み進める私たちをも「とり乱」させておかない。2021/09/21

サラ

1
レポート用。非常に読みやすく、読んでいて苦ではなかった。2013/07/03

YASU

0
まず田中美津論とくにとり乱し論考が秀逸だと感じた.そこからの,内なる優生思想との接続.人間だれもが孕む「よくありたい」という欲望.誰もが持つ,他者を犠牲にしてでも,という感情.それを悪だと認めよ.そのうえで,不可知な他者との出会いによって人はとり乱す.そうした自己を見つめよと.この哲学者は,だんだんと哲学から外れていく.そこが魅力.2022/09/23

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