出版社内容情報
本書は現代インドネシアにおける芸術の伝承という問題を考察するものである。ジャワ島北岸チルボンの仮面舞踊をとりあげ、芸術を伝承することを一人の芸術家が芸を身につけ、変化させながら熟練していくプロセスとして見ていく。チルボンの仮面舞踊は、家族儀礼や農耕儀礼にともなって上演される地方伝統芸術である。本書では一組の仮面舞踊の踊り子の親子に焦点をあて、スハルト体制下の文化政策のなかで芸術伝統の伝承が変化していく様相を明らかにした。村落社会内での伝承と芸術教育機関での教育による継承の相違がくっきりとうかびあがる。<B
第1章 序論
1・1 研究の目的と研究対象
1・2 上演を支える技と知識
1・3 ジャワ芸術に関する先行研究
1・4 問題の所在
1・5 本書における記述と分析の方法
1・6 調査期間と資料
1・7 本書の構成
第2章 トペン・チルボンの概況
2・1 スランギット村の概況
2・2 トペン・チルボンの上演
2・3 トペン・チルボンの歴史的背景
2・4 トペン・チルボンと関連するチルボンの諸芸術
2・5 村落社会における踊り手
第3章 トペン・チルボンの音楽と舞踊
3・1 音楽
3・2 音階
3・3 音楽の基本的構造
3・4 舞踊
第4章 ケニ・アルジャの芸術活動
4・1 系譜
4・2 伝承
4・3 芸の伝授と門付け
4・4 一座を率いた上演活動
4・5 個人様式の確立
4・6 一座の統率
4・7 イスラーム教師との葛藤
4・8 他の踊り手との葛藤
4・9 内面の修行
4・10 海外公演と新たな上演機会
4・11 踊り手の育成過程
第5章 西ジャワにおける「地方芸術」創成活動
5・1 「西ジャワ芸術」創成活動成立の背景
5・2 独立後の西ジャワにおける舞踊創作活動
5・3 E・アトマディブラタによる雑誌『カウィット Kawit』の
刊行と舞踊学校の設立
5・4 芸術教育機関の設立
5・5 「地方芸術」創成活動におけるトペン・チルボン
第6章 ヌヌン・ヌラシの芸術活動
6・1 村での習得過程
6・2 トペン・チルボンの研究者たちとの出会い
6・3 芸術教育機関における教育
6・4 「自然の芸術家」
6・5 創作行為の重要性
6・6 創作作品の分析
6・7 精神の修行
6・8 等級と学位
6・9 芸術実践の模索
第7章 結論──「地方芸術」の伝承──
7・1 これまでの議論の要約
7・2 芸の伝承
7・3 「地方芸術」創成の問題
7・4 今後の研究への指針
引用文献表
用語一覧表
資料
あとがき
索引
内容説明
急速に進む近代化の中で、変化にさらされつつある伝統芸術の動態を踊り手の実践に焦点を当てて分析する。親子二代に亘る仮面舞踊の技と知識の相違を身をもって習得した著者の迫力ある研究。
目次
第1章 序論
第2章 トペン・チルボンの概況
第3章 トペン・チルボンの音楽と舞踊
第4章 ケニ・アルジャの芸術活動
第5章 西ジャワにおける「地方芸術」創成活動
第6章 ヌヌン・ヌラシの芸術活動
第7章 結論―「地方芸術」の伝承
著者等紹介
福岡まどか[フクオカマドカ]
1964年東京生まれ。1987年東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。1992年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。1998年総合研究大学院大学文化科学研究科修了。修士(音楽)/博士(文学)/民族音楽学専攻。1988年~1990年文部省アジア諸国等派遣留学生として、インドネシア国立舞踊アカデミーバンドゥン校に学ぶ。現在、国立民族学博物館外来研究員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。