出版社内容情報
〈下層社会〉から〈中流社会〉へ。近代日本100年の歴史がなしとげた構造的転換を,都市下層の生活のあり方の変化に即して実証分析,近代の都市生活の意味を考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひつまぶし
4
相対的に安定した大経営労働者を定式化するための対象物でしかなかった近代日本の「都市下層」の実体をつかもうとする試み。かつては日本社会全体が貧しく、他の国民の生活水準も都市下層と大差なかった。しかし、社会の安定にともなって都市下層の内実や社会的な位置付けが変化していく。生活構造論の視点から史料を読み解き、その過程を明らかにする力作には違いないが、史料の性質もあるのか、都市下層を世帯単位の存在に収斂させ、単身者を切り捨ててしまっているところは疑問が残る。強調するわりに共同性そのものを語らないのも気になった。2025/06/27