出版社内容情報
ルーマニアでは、冷戦終結後、チャウシェスク大統領による強圧的政治体制が打倒され、市場経済への移行がはかられてきた。1990年以降進められてきたこのルーマニアにおける市場経済移行は、体制改革・構造改革の側面から見ると不十分であり、これがマクロ経済の安定化を難しいものとしている。
本書では、価格・為替自由化、企業の私有化、構造改革のための産業政策、中小企業振興策に焦点を当て、他の東欧諸国やロシアとの比較を通して、ルーマニア経済の課題を探り、今後の展望を図る。
目次
第1部 社会主義経済システム崩壊と市場経済移行
第1章 社会主義経済システム崩壊と比較経済体制論(1)
1 はじめに
2 社会主義経済システム崩壊の理論(1)
―中央計画機関の情報処理能力の不足と分権化―
3 社会主義経済システム崩壊の理論(2)
―ソフトな予算制約―
4 社会主義経済システム崩壊の理論(3)
―資本市場の欠如と国家による企業設立―
5 おわりに
第2章 社会主義経済システム崩壊と比較経済体制論(2)
1 これからの比較経済体制論
2 市場経済への移行理論(1)
―マクロ経済安定化政策―
3 市場経済への移行理論(2)
―システム改革と構造改革―
4 シークエンジングとスピード
5 おわりに
第3章 旧社会主義国の市場経済システムへの移行スピードと移行費用
1 はじめに
2 移行戦略のシークエンジングとスピード
3 移行期における統計のバイアスの問題
4 移行期に生ずる問題
5 マクロ経済安定化政策の施行上の問題
6 おわりに
第2部 ルーマニアにおける市場経済移行の進展
第4章 ルーマニアにおける改革プログラム―500日計画との比較―
1 チャウシェスク時代からの移行
2 戦略概要
3 調整プログラム
4 500日計画との比較
第5章 ルーマニアにおけるマクロ経済安定化
1 ルーマニアにおけるマクロ経済安定化の進展
2 経済パフォーマンスの検討
3 一時的な経済安定化と改革戦略の変更
4 市場経済移行の第2ラウンド
5 市場経済移行の第2ラウンドへの挑戦
第6章 ルーマニアにおける私有化の進展と問題点
1 はじめに
2 改革プログラムにおける私有化
3 国有企業の再編
4 私有化法
5 私有化過程の比較と問題点
6 おわりに
第7章 私有化の再スタート
1 はじめに
2 私有化加速法
3 私有化の現況
4 残された私有化の加速
5 今後の私有化の課題
第8章 産業政策
1 産業構造改革の必要性
2 ルーマニアにおける産業政策
3 中欧諸国の産業政策
4 まとめ
第9章 中小企業振興政策
1 はじめに
2 ルーマニアにおける中小企業の発展
3 中東欧諸国における中小企業振興政策
4 中小企業政策の問題点
5 まとめ
参考文献
年表
索引
内容説明
著者の研究は、第一に、なぜ社会主義経済システムは崩壊したのか、あるいは市場経済システム移行はどのようなフレームワークと理論的基礎付けの下に行われるのかといった比較経済体制論の理論的側面、第二に、ルーマニアの市場経済移行のフォロー、そして第三に、ロシアの市場経済移行のフォロー、の三テーマを柱として行ってきた。本書は、このうち第一と第二のテーマをまとめたものである。
目次
第1部 社会主義経済システム崩壊と市場経済移行(社会主義経済システム崩壊と比較経済体制論(社会主義経済システムの崩壊;市場経済システムへの移行)
旧社会主義国の市場経済システムへの移行スピードと移行費用)
第2部 ルーマニアにおける市場経済移行の進展(ルーマニアにおける改革プログラム―500日計画との比較;ルーマニアにおけるマクロ経済安定化;ルーマニアにおける私有化の進展と問題点;私有化の再スタート;産業政策;中小企業振興政策)