内容説明
憲法学者10年+釜ヶ崎弁護士10年。「理論と実践の架橋」を体現する著者が見る「幻」は、社会の片隅に追いやられた生命の1つ1つから立ちのぼる。「日本に憲法があるんか」という問いに答え続ける著者、初の書き下ろし。
目次
序章 人権という幻
第1章 市民性について
第2章 人間の尊厳について
第3章 市民社会の法について
第4章 国民国家の魔神性について
第5章 裁判所の憲法解釈について
終章 カラマーゾフ的対話への誘い
著者等紹介
遠藤比呂通[エンドウヒロミチ]
1960年生まれ。1984年東京大学法学部助手、1987年東北大学法学部助教授(憲法講座)。1997年より弁護士(西成法律事務所)/憲法研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フクロウ
2
東大学卒助手、樋口弟子、東北大勤務という憲法学者のエリートコースから一転、キリスト教の信仰もあり大阪は西成での弁護士に転じた遠藤比呂通先生の、自身の裁判実践に依拠して書かれた部分の多い本。「個人の尊厳」は、「対話の相手とみなされない」ときに毀損される。理論を弄んでばかりいてはダメで、「声を上げられない」隣人を実際に助けてこその基本的人権ではないのか。基本的人権を実現できると信じ共有できる「幻vision」とするために。2023/11/07
メルセ・ひすい
2
15-91 ☆人間の尊厳!個人のかけがえのなさをほんとうに自分のものにできる人の数は少ない。そして、さらに少ないのは、理念の空中楼閣に留まることなく、日々の暮らしの中で個人のかけがえのなさを実現する手段を現実に根ざして考えていく人々である。学問の世界と実践の世界それぞれに生きる両者が支持する「人権は理論的には正しいけれど、実践には役に立たない」という命題を批判的に検討。著者が弁護士としてかかわった事件の依頼者を主人公に、人権を語る。 2011/12/02
koji
1
橋下市長が、国旗掲揚、君が代斉唱時の不起立による教師の罷免を言い立てたことに違和感はあっても、問題点が見えませんでした。サッカーの君が代斉唱に、高ぶりを覚える人も多い現実を考えると、国民的合意の得られやすい命題と思っていました。しかし著者は、ジョン=ロックの「人間として存在することを相互に承認するという最低限の信頼がなければ、たとえ目に見える暴力がなくても、人間は生きていけない」と反論して納得しました。民主主義とは、責任を負う自己が状況を確認し、対話を継続することとする著者の結論は極めて重いものです。2012/04/01
James Dougherty
1
日本の司法が「当然の前提」として、口にできないでいること(筆者の言い方だと、対話を拒んでいる相手)についての多くの鋭い指摘のある名著。弁護士でもある著者の実体験に基づく例が多く、その部分は大変分かりやすいが、文学作品が引用される部分はピンとこないところもあった。文学作品の引用は事件の話を直接話しても「ピンと来ない」人に対してなんとか伝えようとするという趣旨か?2011/09/18
kozawa
0
今時で言えば「左派人権派」法律家/弁護士。著者の意見に賛成するかどうかは別にしても、どういう理屈/背景でこういう立場をとり続けているのかたまには丁寧に話を聞いてもいいんじゃないか的な意味で読むのはいいんじゃないでしょうか。この主張にそのままどういするかと言われたらNOだけれども、こういうのを一蹴するのは私の美学じゃない。2012/03/09
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