内容説明
イギリス現代思想を支える保守主義者オークショットの全体像に迫る。「営み、使用、慣習」の中にのみ現れる“実践知”を重視し、合理主義を批判する、保守主義の古典的論文集。
目次
政治における合理主義
自由の政治経済学
バベルの塔
合理的行動
政治教育
歴史家の営為
保守的であるということ
人類の会話における詩の言葉
ホッブズの著作における道徳的生
大学にふさわしい「政治学」教育について
新しいベンサム
代表民主主義における大衆
ロゴスとテロス
政治を語る
政治的言説
著者等紹介
オークショット,マイケル[オークショット,マイケル] [Oakeshott,Michael]
1901‐1990。イギリス・ケント州チェルスフィールド生まれ。ケンブリッジ大学ゴンヴィル・アンド・キーズ・カレッジ卒業。同カレッジのフェローおよび歴史学チューター。第二次世界大戦に従軍後、オックスフォード大学ナフィールド・カレッジを経て、ハロルド・ラスキの後任として1951年から1969年までLSE(London School of Economics and Political Science)政治学教授をつとめた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
17
近代以降の一つのモードになった「合理主義の専制」を戒め、過去から連綿と続いてきた慣習や詩、学問を目的合理性から切り離し、その独自の世界と意義を擁護している、保守の哲学の古典。詩が与えるイメージの固有性を論じた「人類の会話における詩の言葉」では、科学と実践の言語、知とある程度詳しく区別しながらその哲学が語られているため、他と合わせて読むと全体像が掴みやすい。復古主義の頑迷さはなく、理性だけに頼るものが陥りやすい極端さへの傾斜がないため、安定感のある議論が展開されている2014/09/13
やまやま
10
現在出版されている原著に対応した全訳である。こちらは、ほぼ原文を句読点まで含めて日本語に移そうと努力している。その努力は十分に感じられるが、直訳を目指しているので、そこがamazonのでの辛い評になっていることも了解できる。自由の政治経済学は、競争が統御の装置としてうまく機能しえない事業は公共による施行に移されなければならないという原則を踏まえたもので、なんでも政治的統制の下におくことの危惧を語る。自由主義者にとっては独占というものはすべて高くつくものであり、隷従を生みやすいという点でハイエクを思い出す。2021/03/27
てれまこし
8
戦後には左右の全体主義から自由を擁護する立場が(新)保守と呼ばれるようになる。日和見主義的なんだが、自由主義の敵としてのバーク的保守の伝統に則ってそれをやる。守られるべき自由は抽象原理としての自由ではなく伝統としての自由。面白いのは、この保守の立場は自然主義(啓蒙的自由主義)や歴史主義(マルクス主義)が否定されて出てきた最新の立場であると主張される。「近代後」の思想としての保守が位置づけられてる。オークショットにポストモダンの要素があるんじゃなくて、ポストモダンが知らずに保守主義の要素を取り込んだのである2020/01/03
ミスター
6
今読むと非常に面白いことにバフチンやデリダを想起させるところがあった。例えば学問(歴史学)における目的合理性を批判し、結論よりも弁論のスタイルにこそ価値を置く点はきわめてデリダ的なのではないか。それからオークショットは複数の声を擁護している。ここに私はバフチン的なポリフォニーと容易に繋げられる発想だろう。オークショットの議論は一般に(というか昔の私)保守思想の文脈で考えられているが、そのような枠すら越える力強さを感じたのが再読した印象である。2019/04/05
佐藤 智治
2
なかなか消化出来なかったが、ベンサムの批判はためになった。 ベンサムの実利的な功績は認めるが、哲学者としては独創性皆無と吐き捨てている。 それに関連して、啓蒙思想家も同類と射程を伸ばしている。 そうは言っても、停滞した社会の活力やモラルの低下は看過出来ない。嘘話でも進歩しなくては国や社会は持たないのでは、と思索する自分がいます。2019/12/09
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