出版社内容情報
社会的・価値的・文化的変容のなかで、フランス中等教育は、どのように知への新しい態度を求めたのか。近代に先行する、中世やルネッサンス期における教養をめぐる思想の歴史に遡りつつ、教養を再構成しようとした近代という時代の駆動力を描く。同時に、近代以降における学校への教養の組み込みはいかなる問題を残したのかをも問う。
内容説明
教育の文脈のなかで、教養はどのように捉えられてきたのか。「知の教育」という視角から教養問題にアプローチし、フランスにおける教養と教育をめぐる思想史を探究する。
目次
第1章 フランス近代における教養の再定位(教養形成の場としてのフランス中等教育;フマニタスから“一般的教養”へ;デュルケーム『フランス教育思想史』―教養知についてのリフレクション)
第2章 近代教育と古典(語)・レトリック(レトリック的教養の失墜と新しい「型」の教育―弁論から小論文へ;古典の扱われ方にみる変容と模倣の存続―暗誦・復誦のためのテクストから、解釈の対象としてのテクストへ;近代国民国家形成期における古典語の位置づけと役割について;古典語学習の再生と新しい「レトリック的教養」の模索;デュルケームによる古典学習の再生―普遍なるものについての認識から差異へひらかれた思考の形成へ)
第3章 近代フランス中等教育と科学による教養(産業化の進展と科学教育;科学による教養;デュルケームにみる「科学の文化」と「自然の教育」)
第4章 論理的教養への眼差し(中世の大学における自由学芸の教育と現実の生きた討論;「信仰と理性の調和」という世界観のなかにある弁証法;近代実験科学・近代合理主義思潮における論理的弁証法・討論;実践知としての討論術/実験的推論・学問的論証)
第5章 教養と哲学教育(批判的・自立した思考を備えた人間・市民の形成のはじまり;リセの哲学教育を考える―その複層性)
著者等紹介
綾井桜子[アヤイサクラコ]
1972年生まれ。日本女子大学大学院人間社会研究科教育学専攻博士課程後期単位修得満期退学。博士(教育学)。現在、十文字学園女子大学人間生活学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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