出版社内容情報
100年前の日本で社会問題化した中等学校の入学難と「入試改革」の経緯を詳細に分析し、現代に続く教育と選抜の問題を検討する。
1920年代の日本における中等学校入学難問題への対応は、どのような帰結をたどったのか。政治的・社会的議論を巻き起こした「入試改革」の経緯を、当時の史資料を繙きつつ歴史的・社会的背景とともに詳細に論じる。さらには、現代の中学受験や高大接続といったアクチュアルな課題も視程に、「教育と選抜」をめぐる検討を行う。
【目次】
はしがき
序章 なぜ一九二〇年代の「入試改革」が問題なのか
1 問題の所在
2 先行研究の検討
3 本書の課題と意義
4 本書の構成
第一章 「中等学校入学難問題」の社会的背景
1 中学校・高等女学校への進学動向
2 児童の心身発達に対する入試の「悪影響」への注目
3 メンタルテスト・教育測定への関心増大
4 学習用具(ノート・鉛筆・謄写版)の普及
5 「入試改革」への焦点化
第二章 「入試改革」をめぐる動向──「中等学校入学試験撤廃期成聯合会」の結成を中心に
1 入学難問題の緩和に向けた種々の動き
2 学科試験撤廃論の登場
3 各地で実施された入学試験の実態
4 「中等学校入学試験撤廃期成聯合会」の結成
5 小括
第三章 乱立する中等学校入試改革案と争点のありか
1 メンタルテスト導入論
2 小学校の成績評価活用論
3 口頭試問推進論
4 学校増設論
5 入試撤廃論と抽籤論
6 二転三転した市川源三の入試改革論
7 何が争点となっていたのか
第四章 文部省による入試改革の「断行」
1 一九二七(昭和二)年六月に発表された文部省案に対する反応
2 一九二七(昭和二)年八月から一一月にかけての経過
3 文部省案に対する反応
4 一一月の「改正」──暗雲立ち込める「新制度」の先行き
第五章 座礁する入試改革
1 「改革」後の入試実施状況
2 「改革」実施後の社会的反応
3 文部省による新制度初年度の総括
4 政権交代、そして大阪における情実事件の発覚
5 筆記試験の「復活」
6 「虚栄心」か「人情」か
終 章 「入試改革」が見落としてきたもの
1 本書の知見とその意義
2 「入試改革」の限界
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引