出版社内容情報
「教師の責任」を社会的・文化的文脈で分析しつつ、教職倫理の問題を、日本の学校文化・教員文化の動態として実証的に解明する。東日本大震災での被災をめぐる経験、「いじめ」問題等を通して、学校で「子どもの命と安全」を守る教師の責任が改めて問われている。子ども・親の持つ教師への期待を、今日の教師たちはどのように認知し、それに対する責任意識を持っているのか。その実態について質問紙調査を通じて分析しつつ、教員文化の再構成の可能性を追究する。
はじめに─研究目的・研究過程[久冨善之]
序 日本の教員文化の現在と「教師の責任と教職倫理」―本書のテーマと方法[長谷川裕]
1.本書のテーマ
2.研究の方法と本書の構成
第?部 10地域教師調査の結果と、そこに見る10年前調査からの変化
第1章 「教師の責任と教職倫理」の文化論と社会過程論─1994年と2011年の2つの被災事件から問われるもの[久冨善之]
1.1994年「大河内清輝君『いじめ』自殺」事件の現地を訪ねて
2.大川小学校被災跡地に立って
3.形成されてきた、ある姿の「学校文化」─「教育と責任」をめぐる諸関係の構成
第2章 質問紙調査の課題と内容構成、対象と方法、結果概要[久冨善之]
1.教師対象質問紙調査の課題
2.質問紙の内容構成
3.質問紙調査の対象者と、実施過程
4.各質問への回答結果
第3章 10年前調査からの変化のなかにみえること[福島裕敏]
1.課題・方法・対象者
2.各項目の変化
3.教師を取り巻く人間関係の変容
4.教職観の変容
5.教職生活の変容
6.教職アイデンティティの規定要因の変容
7.まとめ
第4章 教職アイデンティティの変化とその含意[長谷川 裕]
1.分析方法
2.教職アイデンティティ関連6項目への回答の因子分析と度数分布
3.教職アイデンティティ2因子と諸質問項目との相関分析
4.教職アイデンティティにどのような変化が見られ、それは何を含意しているか
第5章 学校職場と教師の意識・生活[福島裕敏]
1.課題・方法・対象者
2.学校職場の雰囲気把握の分化と属性による違い
3.学校による雰囲気の違い
4.学校職場の雰囲気の規定性
5.学校職場の雰囲気の規定性の時系列比較
6.まとめ
第6章 教職観をめぐる時代的変化と、その今日的動向[久冨善之]
1.教師自身の教職観のこの20余年間の変化
2.教師自身の教職観のこの10年間の変化を、6項目で見る
3.教職観共通7項目の因子分析を通じてこの20余年間の変化を見る
4.2014年調査の教職観13項目の因子分析を通じて
5.教師自身の教職観をめぐる分析の残された課題
第7章 教師のバーンアウトの変化と現代的要因連関[山田哲也]
1.教師たちのバーンアウトをめぐる状況─過去の調査との比較
2.属性別にみたバーンアウトをめぐる状況
3.何がバーンアウトを生み出すのか
4.まとめと今後の課題
第8章 教師の期待認知・責任意識とその性格[長谷川裕]
1.期待認知と責任意識の関係 (1)
2.期待認知と責任意識の構造
3.期待認知と責任意識の関係 (2)
4.期待認知・責任意識と諸変数との関係
5.教員の期待認知・責任意識はどのような性格を帯びているか
第9章 教育改革施策の全国・各調査地域における取組み状況[本田伊克]
1.全国での教育改革施策取組み状況
2.10地域における改革施策への取組み傾向
3.各地域における教育改革施策取組みの特徴
4.「上からの学校組織改革」と「関係者等の学校寄与」において特徴的な傾向を示す地域
5.まとめと考察
第10章 教育信念をめぐる闘争─強権的注入 vs. 協調的発達支援[山本宏樹]
1.教育信念とその闘争
2.理論仮説:教育信念の2信念4類型
3.調査の方法と概要
4.教育信念の分析
5.おわりに
第11章 特別支援教育の取り組み状況の校種間比較─教師の期待認知・責任意識の形成に着目して[松浦加奈子]
1.特別支援教育に着目する意義
2.調査の概要
3.特別支援教育に力を入れている学校
4.特別支援教育への取り組みと職場の雰囲気・状況
5.特別支援教育に対する教師の期待認知・責任意識の形成
6.まとめと考察
第12章 闘争なき時代における教師の政治意識[松田洋介]
1.闘争なき時代の教師の政治意識をさぐる
2.政治的有効性感覚という視点
3.教師の政治的有効性感覚の諸相
4.考察
第13章 訪問したD町とその2中学校に見る教育活動の特徴[久冨善之]
1.全国10地域との回答結果を比較してのD町の特徴
2.2つのD町立中学校訪問・インタビューから
第?部 東日本大震災・被災地教師調査の結果分析
第14章 調査の目的、経過、対象と方法[福島裕敏]
1.目的・経過・組織
2.質問紙の内容構成
3.調査の対象と方法
第15章 質問紙調査の結果概要[福島裕敏]
1.回収率と回答者の属性
2.各設問に対する回答傾向にみる各地域の特徴
3.各地域の特徴の集約的把握
4.教職アイデンティティ関連因子と他の因子との相関
5.まとめ
第16章 被災地訪問とインタビュー調査(自由記入を含む)から[久冨善之]
1.質問紙「自由記入」欄の記入者率の違い
2.A市の41人の「自由記入」で目立つ困難性
3.B市39人の「自由記入」にみられる津波被災とその後
4.C市43人の「自由記入」に表れる支援を受ける側のジレンマ
5.2市4教師の話から見えてくるもの
6.「自由記入」と「インタビュー結果」から見えてきたもの
結び 経年比較にみる教員文化の変容と「教師の責任と教職倫理」に関する教員文化論的分析[長谷川 裕]
1.本書のテーマ、特に「教師の責任と教職倫理」というテーマの確認
2.日本の教員文化の「現在」に関連する知見とその含意の整理
3.経年比較調査が示す日本の学校教員の教員文化の現在
4.「教師の責任と教職倫理」と教員文化
5.今後の追究課題
おわりに─「日本の教員文化」研究30余年を振り返って:本書研究成果の位置と課題を考える[久冨善之]
1.「日本の教員文化」という課題意識
2.「教師の責任と教職倫理」という課題意識から見えてきたもの
索引
久冨 善之[クドミ ヨシユキ]
編集
長谷川 裕[ハセガワ ユタカ]
編集
福島 裕敏[フクシマ ヒロトシ]
編集
内容説明
学校教員を対象とする経年調査により、教師の意識やその変化を捉えるとともに、東日本大震災被災地の学校・教員への調査から、教育の困難と可能性を追究する。
目次
序 日本の教員文化の現在と「教師の責任と教職倫理」―本書のテーマと方法
第1部 10地域教師調査の結果と、そこに見る10年前調査からの変化(「教師の責任と教職倫理」の文化論と社会過程論―1994年と2011年の2つの被災事件から問われるもの;質問紙調査の課題と内容構成、対象と方法、結果概要;10年前調査からの変化のなかにみえること;教職アイデンティティの変化とその含意;学校職場と教師の意識・生活 ほか)
第2部 東日本大震災・被災地教師調査の結果分析(調査の目的、経過、対象と方法;質問紙調査の結果概要;被災地訪問とインタビュー調査(自由記入を含む)から)
結び 経年比較にみる教員文化の変容と「教師の責任と教職倫理」に関する教員文化論的分析
著者等紹介
久冨善之[クドミヨシユキ]
一橋大学・大学院社会学研究科・名誉教授
長谷川裕[ハセガワユタカ]
琉球大学・人文社会学部・教授
福島裕敏[フクシマヒロトシ]
弘前大学・教育学部・教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。