出版社内容情報
「帰国子女」が他の日本人との間にどのような差異を見出し、それにどのような意味を与え、いかに対応しているのかを、インタビュー、中学校での1年7ヵ月に亘るフィールドワークをもとに解く。先行研究にはアイデンティティの確立を①単一の文化の獲得②複数文化への帰属意識③国家の枠組からの解放にみる立場がある。が、本書では国家・文化を歴史的・社会的構築物とみなし、アイデンティティを、特定の語り方や政治的な意図のもとで、恣意的に差異を布置しながら暫定的に定められる位置どりとして捉え直す。カルチュラル・スタディーズの一分野。
【目次】
序章
① 研究の目的と帰国子女教育の背景
② 「帰国子女」の定義
③ 本論文の構成
第1章 「帰国子女」のアイデンティティ研究への視座
1 先行研究の検討
① 国民国家の文化の措定とそこへの帰属意識
② 超文化モデル
③ 「帰国子女」の語り方
2 本研究の理論的枠組み
① ホールのアイデンティティ論
② 本件急の位置付け
第2章 言説空間における「帰国子女」の位置取りの政治
1 アイデンティティ研究のための言説空間への着目
① 「帰国子女」をめぐる言説や表象に関する研究
② 調査の方法
2 教育界における「帰国子女」言説とアイデンティティ構築
① 「帰国子女」をめぐる言説の変遷
② 「帰国子女」カテゴリーに対する主体の位置取り
3 マス・メディアの「帰国子女」表象とアイデンティティ構築
① ある「帰国子女」の表象
② 「帰国子女」表象とアイデンティティ構築
第3章 帰国子女教育学級でのフィールドワーク
1 研究の手法
① エスノグラフィの有効性
② フィールドワークの概要
2 研究の対象
① あかつき中学校の帰国子女教育の制度
② 保護者の学校選択
③ あかつき中学校の「帰国生」
第4章 あかつき中学校における「帰国生」の位置取りの政治
1 「帰国生」による与えられた位置の探求
① 生徒にとっての入学検定
② あかつき中学校における1年空組の位置
③ 「帰国生」という呼称
2 あかつき中学校における「帰国生」の位置取りの政治
① 順応の位置取り―あかつき中学校生になること
② 抵抗の位置取り―英語という「資源」
③ 混在化する場―ハローウィーン・パーティの成立過程
3 「帰国生」集団内部の多様性
① 「帰国生」らしくない「帰国生」の位置取りの政治
② 「帰国生」であることとジェンダーとの節合
③ アイデンティティの復層性
終章
① 本研究の要約
② 「帰国生」の位置取りの政治と介入の可能性
③ 本研究の意義
④ 今後の課題
注
引用・参考文献
資料
1 あかつき中学校でのフィールドワークの概要
2 あかつき中学校1年空組の保護者用質問紙
3 あかつき中学校1年空組の生徒用質問紙およびその回答抜粋
4 生徒祭クラス展示の決定過程のフィールドノート
5 ある英文法の授業のフィールドノート
6 英語劇上演過程のフィールドノート
7 MsAの事例解釈
8 ハローウィーン・パーティ開催のフィールドノート
あとがき
索引
内容説明
「帰国子女」と呼ばれる子どもたちは、日本の学校でどのような体験をしているのか?カルチュラル・スタディーズの思潮の中で、中学校でのフィールドワークをもとに、子どもたちのアイデンティティのあり様を描き出す。
目次
第1章 「帰国子女」のアイデンティティ研究への視座(先行研究の検討;本研究の理論的枠組)
第2章 言説空間における「帰国子女」の位置取りの政治(アイデンティティ研究のための言説空間への着目;教育界における「帰国子女」言説とアイデンティティ構築;マス・メディアの「帰国子女」表象とアイデンティティ構築)
第3章 帰国子女教育学級でのフィールドワーク(研究の手法;研究の対象)
第4章 あかつき中学校における「帰国生」の位置取りの政治(「帰国生」による与えられた位置の探索;あかつき中学校における「帰国生」の位置取りの政治;「帰国生」集団内部の多様性)
著者等紹介
渋谷真樹[シブヤマキ]
1970年宮城県生まれ。’99年お茶の水女子大学大学院博士課程人間文化研究科人間発達学専攻修了。博士(人文科学)。現在奈良教育大学教育学部助教授。共著に「多文化を生きる」(2000年)「フィールドワークの技法と実際」(’99年)「ものと子どもの文化史」(’98年)がある
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