出版社内容情報
世俗主義をとるトルコは、なぜ建国期に廃したイスラーム教育を再開し、必修化させるに至ったのか。その政教関係の変遷を検討する。
本書はトルコ共和国でイスラーム教育科目が小学校で再開され、中学校、高校へと拡大、1982年に必修化されるまでの過程を検討する。そこには「政教分離」や「世俗主義」と訳される「ライクリキ」の解釈の変化とナショナリズム理解の変容が生じていたことを明らかにし、政教関係の変化を跡づける。
内容説明
世俗主義を国是とするトルコ共和国は、なぜ建国期に廃したイスラーム教育を再開し、必修化するに至ったのか。その政教関係の変遷を検討する。
目次
序章
第1章 トルコ共和国の建国と宗教教育の廃止
第2章 非宗教的な道徳教育から私教育における宗教教育へ
第3章 公教育における宗教教育の再開と国家による宗教管理
第4章 国家と良心の自由
第5章 イスラームとトルコ人
第6章 道徳と宗教
終章
著者等紹介
上野愛実[ウエノマナミ]
東京外国語大学外国語学部南・西アジア課程トルコ語専攻卒業、東京大学大学院総合文化研究科にて博士(学術)の学位を取得。日本学術振興会海外特別研究員を経て、2022年より岩手県立大学専任講師。専門はトルコ現代史、中東地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
16
1930年代のトルコ共和国では、ムスタファ・ケマルが推進した世俗化改革により宗教教育は廃止された。その後、1940年代以降イスラーム教育科目が再開されやがて必修化される。本書は、トルコ共和国のイスラーム教育に関する政策の変遷を、当時の政治家や知識人の議論を丹念に辿りながら跡づけることで、国家と宗教の関わりの一端を照射している。宗教教育を国家管理の元に置くことの是非のせめぎ合いから、教育現場での宗教文化・道徳科の導入に至るまで、その時々の政治的な思惑も絡みながら様々な議論が展開されてきたのが見てとれる。2025/09/01