出版社内容情報
ヒトの思考の独自性はどこにあるのか? 「志向性の共有」というトマセロの理論的関心の焦点を体系的に論じた要の著書、待望の邦訳。
ヒトの思考の独自性は、それが根本的に協力的なものである点にある。志向性の共有を伴うあらゆる行為をなす点に決定的な違いがあり、協働採食において他者との相互調整を行っていた初期の進化的ステップこそが現生人類の文化を可能にしたのだ。『心とことばの起源を探る』の続編にして『道徳の自然誌』の対となる姉妹篇、ついに登場!
内容説明
「ヒトらしい思考」とはどんなものか?他者との協力を可能にした「志向性の共有」を切り口に、多様な社会や文化を築き上げたヒトの思考の進化を探る。
目次
第1章 志向性の共有仮説
第2章 個別の志向性
第3章 志向性の接続
第4章 集合的志向性
第5章 協力としてのヒトの思考
第6章 結論
著者等紹介
トマセロ,マイケル[トマセロ,マイケル] [Tomasello,Michael]
1950年生まれ。1980年、ジョージア大学にて博士号を取得(心理学)。デューク大学教授、マックス・プランク進化人類学研究所名誉所長
橋彌和秀[ハシヤカズヒデ]
1968年生まれ。1997年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。九州大学大学院人間環境学研究院准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
8
他の類人猿と異なる現生人類の心理的特徴は他者の意図を理解する点にあり、この特徴が協働する社会を築く基盤となると考える著者は、現生人類の思考を個人主義的な大型類人猿と比較し、認知表象、推論、自己モニタリングの3要素から解明を試みる。その際本書は、進化の過程で個人主義的大型類人猿から協働的現生人類へ移行するには、中間段階が必要と考え、20万年前に出現する現生人類以前の200万年前に「初期人類」モデルを想定する。ここから環境圧力による食料不足を巡って採食活動に転換し、各人が分担する認知方法が生じたと仮説される。2021/12/28
marukuso
3
ヒトに特異的な「客観的-内省-規範的思考」の起源を再構築する。本書では志向性の共有をキーワードにヒトの思考の表象、推論、自己モニタリングが進化的な視点を含みつつ、どう変遷してきたかせまっていく。他者との協働、協力を生み出し、社会的な課題にどうかかわり、適応してきたかを説明する。2021/10/31
borisbear
3
本書の主題は序文にある通り「ヒトの思考の独自性はどこにあるのか」で、類人猿などの思考と根本的に異なる要因、具体的には人間の言語や社会制度や科学的世界観などを可能にしている要因を論じている。本書によると、最近約20年の研究で、類人猿の思考が今まで一般に思われてきたよりも高度であると分かってきたらしい(デネットがポパー的と呼ぶような脳内試行錯誤能力や、志向的構えと呼ぶような読心能力など)。それを踏まえた上で、人間と他の動物との違いとして「志向性の共有」が決定的であるというのが本書の中心主張である。2021/05/10
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