出版社内容情報
1970年代以降に英語圏において活発となり、2000年代から日本でも急速に研究・紹介が進んだ現代形而上学。本書では存在と非存在、性質といった大テーマをめぐる議論を概観して枠組みを導入しつつ、穴、価値、フィクションといった個別的なトピックを論じることで、現代の形而上学の方法と手触りを直接に体感できるよう工夫されている。
内容説明
現代哲学の深奥へ!分析哲学のアプローチによる形而上学とはどういうものか。その奥深さと手触りを体感する、新しい入門書。
目次
第1章 何が存在するのかという問い(存在論から始まる問い;不在者のリスト ほか)
第2章 個物の境界―穴とアキレス草の話(個物とは何か;穴の問題 ほか)
第3章 性質とは何か、なぜ同じものが複数あるのか(性質がなぜ形而上学の問題になるのか;クラスと融合体 ほか)
第4章 価値という人間的な性質について―アフォーダンスと神の猫(性質にもさまざまな種類があるということ;関係的性質と外在的性質 ほか)
第5章 フィクションと架空物の問題―形而上学の境界(架空物をめぐる二通りの語り方;パラフレーズによる否定 ほか)
著者等紹介
柏端達也[カシワバタタツヤ]
1965年名古屋市に生まれる。1994年大阪大学大学院人間科学研究科博士課程単位修得退学。博士(人間科学)。現在、慶應義塾大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
数学IAが苦手な上、形而上学の事をろくすっぽ、知らず、「入門」という言葉にのこのこと乗せられ。結果、頭を抱えることになりました。記号はちんぷんかんぷんだけど、フィクション上の人物(シャーロック・ホームズなど)の存在性をどう、証明するかなどのフィクション系についてはオッと思ったり。2018/03/09
マウンテンゴリラ
2
現代形而上学というからには、ギリシャ哲学以来の形而上学のおさらいというわけでもなく、現代哲学の流れの中での存在論、唯名論か実在論かといった類の議論を掘り下げたものであったと思われるが、一般読者にとって、とても入門書といえるレベルの代物でもなく、挫折寸前ながら、一応最後まで目を通したといった感じである。しかし、問題意識として関心を持つことの重要性は理解できる。例えば、アフォーダンス(環境に内在する価値ともいうべきか)について、相対的か、実在的か、傾向的か、といった議論には正直、ついていけなかったが、→(2)2020/12/05
borisbear
1
この本を批判する気はないが、途中で挫折する読者がいるとすればその気持ちが少し分かる。世界の中に本当の意味で存在するものは何か?とか、自然数「2」はどのようなありかたで存在するのか(またはしないのか)とか、著者と問題意識を共有することがまず難しい。存在者のインフレはダメみたいな唯名論的情念も分からない。哲学なので一応ゼロベース思考で、ただ実際はクワインやルイスなどの文献がベースだと思うが、言語学や心理学の(ピンカーとか)認知的基本概念の研究などと異なり、動機付け面で哲学特有過ぎてハードルが高い。2023/04/28
滑車
1
入門とあるが、あとがきに明記されているとおり中級者向け。(結構難しかった。)各章は独立した論題ながら、結構深くまで掘り下げている。それで紙幅が限られているためか、文章が端的で凝縮されたものになり、ときおり断定的な物言いに聞こえる部分もあった。著者特有の冷静な視点はそこかしこに見て取れるが、感想としては読みづらさが先行してしまった……。中級者が読めばとても啓発的な一冊になると思う。2017/11/28
愛楊
0
2017年。determinate/determinableを知りたくて読んだが、それに関する記述は殆ど無かった。穴の形而上学については、加地大介周りの日本の形而上学界隈の内輪感があり興味を持てなかった。そもそも著者が唯物論者であるために、私は全く話に乗ることができなかった。トロープ説については、形容詞の引数を個物にしたいというデイヴィッドソン意味論におけるモチベーションを語るべきではないだろうか。しかし、注釈は良かったかもしれない。注釈だけ読んでも良いと思う。入門のためにはワードマップで十分だと思う。2025/01/30