出版社内容情報
カントは自らに法を与えるという意味での政治的自律がどのような手続きや条件の下で実現されるのかを探究した。そして、政治的自律を実現する手段として言論の自由を重視した。個人間の意見の相違を前提とする言論の自由こそが政治的自律を促すのである。また、各国家の人民の政治的自律が「永遠平和」への移行を可能とするとした。
内容説明
政治的自律―自由を守るために立法に参加し、自らに法を与えること。これがカントの政治哲学の根幹にあった。
目次
第1部 カントの政治哲学(移行をめぐる三つの議論;理性の公共的使用から公開性へ;言論の自由と抵抗権;政治的自律とその条件;世界市民法の構想)
第2部 カントと現代(政治的判断とは何か―判断力と構想力をめぐるカントとアーレント;みずからを尊重するということ―自己尊重をめぐるカントとロールズ;永遠平和と進歩の思想―国際社会の秩序構想をめぐるカントとハーバーマス)
著者等紹介
金慧[キムヘイ]
1980年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(政治学)。早稲田大学政治経済学術院助手、日本学術振興会特別研究員を経て、千葉大学教育学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sk
6
カントがこれだけ面白い政治哲学を展開しているとは知らなかった。久しぶりに哲学らしい哲学を読んだ気分である。2018/02/21
すずき
1
網谷さんの「カントの政治哲学入門」に続いて購読。この順番でよかったと思う。網谷さんの本との違いで言えば、言論の自由についての記述、5章・8章の国際レベルでの政治哲学が展開されていてよい(正直アーレントとロールズの章はよくわからなかったのでまたの機会に読みたい)。SimmonsのKantian functionalism批判で出されているjust annexationとかはカントの国際レベルの政治哲学の政治的自律の話とかでしっかり返せると思うので、読んでよかった。2018/05/08
モンタニャールおじさん
0
第一部では、『啓蒙とは何か』、『理論と実践』、『永遠平和のために』、そして『法論の形而上学的定礎』を中心にしてカントの政治哲学の論理構造が解明される。中心概念は「政治的自律」であって、従来のカント研究よりも著しく民主主義的な政治哲学をカントの著作から見て取っている。そして第二部ではカントに着目した哲学者たち――アーレント、ロールズ、ハーバーマス――とカントを比較することを通じて、再びカント哲学の特質を解明することに努めている。近年の研究動向を踏まえたうえで、カント政治哲学の全体像を明らかにしている。2018/01/22
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