内容説明
存在しない対象を認めるという異端の立場として、近年復活を遂げた「新マイノング主義」の最重要文献。
目次
第1部 志向性の意味論(志向性演算子;同一性;思考の対象;特徴づけと記述)
第2部 存在しないものを擁護する(なにがないのかについて;フィクション;数学的対象と世界;多重表示)
著者等紹介
プリースト,グレアム[プリースト,グレアム][Priest,Graham]
1948年生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにてPh.D.、メルボルン大学にてD.Litt.を取得。メルボルン大学Boyce Gibson哲学教授、およびニューヨーク市立大学特別教授。専門は論理学、形而上学、西洋および東洋哲学史
久木田水生[クキタミナオ]
1973年生まれ。2005年、京都大学文学博士号取得。京都大学文学研究科研究員
藤川直也[フジカワナオヤ]
1980年生まれ。2010年、京都大学文学博士号取得。日本学術振興会特別研究員(首都大学東京)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田蛙澄
2
正直論理学的な前提にあまりついていけなかったので、ちゃんと理解したとは言い難いが、非存在についての独立原理と特徴づけの原理、同一性の問題、ラッセル、クワインへの反論など多彩な内容が盛り込まれていて勉強になった。特に世界意味論を駆使しながらフィクションのキャラクターや数学的な存在や抽象的な存在について論じる部分はとても面白かった。個人的に小説を書いたりもするので、それらが認識論的にナンセンスというのはあまりにつまらないと思っていたので、その点では満足だった。2016/07/03
★
2
本書では『存在しない対象も心的状態の対象となりうる』という非存在主義を様々な反論から擁護したうえで、その非存在主義と非古典論理を駆使して志向性に関する様々な問題を解決していく。個人的には、現代でも広く受け入れられているラッセルやクワインによるマイノング主義批判に対し、次々と応答していく5章がスリリングで面白かった。また、何と言っても本書に収められている小説『シルヴァンの箱』は哲学者である著者自身によって書かれたものであり、一見の価値あり。2014/06/21
roughfractus02
1
嘘つきのパラドックスを、恒偽でなく真偽を問えるものと捉え直す著者は、自らの矛盾許容理論を真偽のどちらかを決める古典論理より弱い論理(非古典論理)として位置づける。この非実在と共生する論理にし「信じる」「崇拝する」「知る」「創造する」のような心的状態の志向性(何かについて、何かに向いている)も含まれる。著者が造語したdialetheism(二つの真を認める立場)は、描写や特徴づけ等の原理を設定し、そこに生じる志向性を、アナーキーな状態のままにしながらモデル作成を目指す。ここでは「丸い四角」が存在するのだ。2017/02/12
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