出版社内容情報
最晩年になされたデンマーク教会制度への果敢な批判。その全貌を明らかにする。文献を紹介・提示する基礎的な作業を通して、キルケゴールの思索の根源に迫る。
かつて実存主義の祖としてもてはやされたキルケゴールは、今日ではほとんど忘れられてしまった。しかし今こそ好機である、「実存主義のキルケゴール」は虚像である、と著者は喝破する。これまで著者は定評ある浩瀚な著作を四冊も積み上げてきた。本書は五冊目、いわば研究の総仕上げである。私達はようやく本物のキルケゴールに会える。
[関連書]
同著者 『キルケゴール青年時代の研究』正・続
『キルケゴール著作活動の研究』前篇・後篇(勁草書房刊)
序論の部
序論(Ⅰ) 課題と方法
序論(Ⅱ) 「キルケゴール教会闘争」研究史素描──本研究の位置付けのために
第一部 十九世紀前半デンマークの教会史的状況
序
第一章 国家教会の成立と「十八世紀」の意味
第二章 十九世紀前半国家教会がおかれた激動的状況
第三章 十九世紀初頭からの約二〇年間「国家教会」がおかれていた
危機的状況──合理主義の勢位とそれへの教会当局の対応
第四章 「国家教会」防衛のための神学の形成と「国家教会の体質」
第五章 改革的諸勢力の運動系統とその動向
第六章 政治的局面での決着──「国家教会」から「国民教会」への移行
総括 デンマーク教会史におけるS・キルケゴールの位置づけ
第二部 教会闘争へと至る個人的内面的要因
序
第一章 父ミカエルによる教育
第二章 「肉中の刺」の意識
第三章 「祈り」の役割
総括
第三部 「国家教会批判」へと決意するまでの精神的苦悩と苦闘
序
第一章 「瞬間のための予備知識」の書(1)──『哲学的断片後書』──
第二章 コルサール事件の意味
第三章 第四回ベルリン旅行とそこでの深刻な「祈り」
第四章 未完の草稿『アドラーについての書』に秘められている
教会闘争の原因
総括
第四部 「国家教会批判」の開始と深化
序 「教会闘争」への大転換
第一章 日誌に見られる「信仰的意識」の根本的変化
第二章 「著作活動の方法と立場」の大転換
第三章 「キリスト教的講話の三部作」に現われた「国家教会批判」の言葉
第四章 日誌の中に仄見えてくる「闘争の構図」へのイメージ
総括
第五部 標的J・P・ミュンスター監督
序
第一章 「復活祭体験」とそれを転機とした新しい展開
第二章 「懺悔をする者」から「懺悔をすすめる説教者」へ
第三章 J・P・ミュンスター監督に懺悔をすすめる説教書
──『瞬間のための予備知識の書』(2)(3)と『「大司祭」「収税人」
「罪ある女」──金曜日の聖餐式における三つの講話』
第四章 日誌記述に現われた「J・P・ミュンスター監督批判」
第五章 「牧師職志願」の問題をめぐっての「会話」に現われた「意見の相違」
第六章 「対立」は「決定的段階」へと入る
第七章 「闘争の劇的な場面」への「予感」と「イメージ」
総括
第六部 三年三ヶ月の地下潜行──兵器庫をつくり武器や弾丸を集める
序
第一章 宗教的著作『自己吟味のために──現代に勧められる』の出版後、
その「第二輯」の出版中止、その後「三年三ヶ月」の沈黙
第二章 この「三年三ヶ月」の位置づけと性格づけ
第三章 「信仰的意識」の更なる深化、「祈り」への集中とその検証、
更に新たな「摂理の体験」、Extraordinaire(異常な人、特別な任務を与え
られた例外者)の自覚
第四章 一八五一年九月から一八五三年十一月二日までの日誌に現われた
「ミュンスター記事」
第五章 「<詩人>としての立場」(<キリスト教的著作家>としての立場)
からの「教会攻撃の準備」──「ミュンスター監督と既存の教会体制
との関係」に関する多量な「未完の草稿」の内容
第六章 「教会攻撃」開始までの一年間の待機──Extraordinaireとしての「任務の
自覚に徹した「攻撃のための構想」を思いめぐらしながら「ひたすら時を待つ」
総括
第七部 「牧師職志望」をめぐる闘いの「線」の帰結
序
第一章 「牧師職志望」に関して幾度も繰返し続けられた「詩人になるか─
牧師になるか」の問い
第二章 「コルサール事件の体験」による「牧師職問題」の意味そのものの
変様と新たに登場した「宗教的詩人」という概念
第三章 「牧師職志望」をめぐってJ・P・ミュンスター監督とのいくたびもの会話、
しかし推薦を得られず
第四章 「牧師職問題」への関わり方の変化
第五章 「牧師職問題」の最終局面
総括
第八部 「教会攻撃」とその過程
序
第一章 戦局の第一局面──ミュンスター監督を「真理の証人」と呼んだ
マルテンセン監督に対する抗議
第二章 戦局の第二局面──戦線の拡大、既存の教会の全牧師層を攻撃対象に
第三章 戦局の第三局面──戦線の更なる拡大(一般の信者層にまで)
──そして「真理の証人批判」から「プロテスタント的テーゼの宣言」へ
第四章 戦局の「最終局面」──「瞬間」の到来の意識のもとで<自分の任務>の
遂行
第五章 死と葬儀
総括
結論の部
結論(Ⅰ) 「キリスト教」における自分の役割についての認識──Correctiv(調整薬)
としての自己認識
結論(Ⅱ) 全体の総括・問題性・意味のメッセージ
主要文献
人名索引
目次
序論の部
第1部 十九世紀前半デンマークの教会史的状況
第2部 教会闘争へと至る個人的内面的要因
第3部 「国家教会批判」へと決意するまでの精神的苦悩と苦闘
第4部 「国家教会批判」の開始と深化
第5部 標的J・P・ミュンスター監督
第6部 三年三ヶ月の地下潜行―兵器庫をつくり武器や弾丸を集める
第7部 「牧師職志望」をめぐる闘いの「線」の帰結
第8部 「教会攻撃」とその過程
結論の部
著者等紹介
大谷愛人[オオタニヒデヒト]
1924年東京都に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程修了。1958年‐60年デンマーク文部省の交換留学生としてコペンハーゲン大学留学。慶應義塾大学名誉教授、文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。