内容説明
終末期医療、脳死・臓器移植、クローン人間、iPS細胞、医療福祉…。様々な課題の密集する広大な生命倫理の森の中を、足元を確かめながら進む。刑法研究者である筆者が、未来への道筋を見ながら、「生命倫理学事始め」を語る。
目次
第1部 iPS細胞と日本の生命倫理
第2部 クローン人間がやってくる!(iPS細胞からクローン人間へ;クローン人間の法律を作ると;クローン人間なんて怖くない;クローン人間から人クローン胚へ;iPS細胞と私の生命倫理)
第3部 生命倫理学事始め(脳死・臓器移植を認めることは「人間の尊厳」に反するか;終末期における家族;日本の生命倫理、日本のヒト胚;生命倫理のゆくえ)
著者等紹介
町野朔[マチノサク]
1943年生まれ。東京大学法学部卒業後、東京大学法学部助手、上智大学法学部教授等を経て、2004年より上智大学生命倫理研究所教授。クローン技術規制法の制定、臓器移植法改正、精神衛生法・精神保健法・精神保健福祉法の改正、医療観察法の制定に関係(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Schuhschnabel
3
日本の生命倫理関係の法整備に長年携わってきた法学者による生命倫理の入門書。内容的には、生殖補助医療や再生医療が主で、臓器移植や終末期医療は従。筆者と明らかに立場を異にする小松美彦氏の意見を尊重するなど、研究者としてのモラルがかなり高い方なのだなという印象を受けた。2017/03/14
evifrei
2
本書に指摘されている通り生命の終わりと始まりを明確にする視点は日本人の国民性に馴染まないという事情の他、生命倫理は極限下における選択の是非を問う面の強い学問なので、自己の立場の正当性を強く主張し自信を持つ事は感情的な抵抗を伴う事は少なくないだろう。だが、町野氏は理論と感情が合致しないのは理論か感情かのどちらか、あるいはどちらも間違っているからだと喝破する。井戸端会議ではなく、政策の提言として責任を持つためにも、一つの見解を持つには理論的な穴が無いか、感情的な抵抗は何に由来するのか、明確にする必要がある。2019/10/08