内容説明
決済サービスの高度化のために銀行、中銀、政府が果たす役割とは。経済活動のグローバル化、ICT利用のユビキタス化が進展するなか、銀行とその主要顧客である企業の競争力を確保するためには決済サービスの高度化が不可欠。利用者の潜在ニーズを掘り起こし、それに応えていくためのヒントを示す。
目次
第1章 決済の役割
第2章 情報通信技術と決済システム
第3章 預金による決済システム
第4章 銀行システムの機能
第5章 金融市場の機能
第6章 わが国銀行による決済システムの当面の課題
第7章 決済システムの将来
著者等紹介
木下信行[キノシタノブユキ]
1977年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。大蔵省銀行局金融制度調査官室(調査課)。1986年ジェトロ・フランクフルト事務所長。1994年大蔵省銀行局金融市場室長。1997年大蔵省銀行局調査課長。1998年金融監督庁官房企画課長。1999年金融監督庁銀行監督第2課長。2001年金融庁監督局総務課長(兼不良債権問題調査室長)。2003年金融庁総務企画局参事官。2004年コロンビア大学日本経済経営センター客員研究員。2005年九州財務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
79
銀行といえば「預金」、「融資」、「為替」と言うイメージが強いので非常に新鮮な切り口。元・大蔵省の官僚さんが書いている本なので、どんなに堅い話をするのかと思えば全くそうではない。むしろ口頭で語りかけるような平易な文章なので、割と苦もなく読めた。「日本人は現金志向(諭吉くんで現ナマのこと)が強いと言われるが、なぜそうなるのか金融制度や銀行システムの面から説明されている。今後、PayPalやStripeのような新興の決済サービスを利用する上で、従来からの銀行におけるサービスと比べる上で、示唆に富む本だと思う。2017/08/20
KAZOO
45
最近、金融庁や日銀が決済業務の高度化とか、ITを活用した金融の高度化ということが言われています。国際的な標準に追い付くとかいうことなのでしょうが高度化という意味があまりはっきりと示されていないのが現状です。この本はその決済に関しての現在の課題や問題点をうまく個別に説明してくれています。一つ一つの問題に対しての説明が若干少ないのが難点ですが現在の問題点がわかります。2015/05/04
izw
14
5月のコンピュータ産業研究会で木下さんの話を聞き、近刊の著書を読んでみた。決済を中心に考え、金融システム、法律、ルールは決済のためにあるという立場。通常は、政府に法定された通貨の発行主体としての中央銀行、金融システムの中核として市中銀行があり、決済は銀行が行う為替業務として論じられるというが、決済を元にした方がすっきりして分かりやすい。預金を使った現在の決済から、価値が変動する証券を使った決済システム、ビットコインなどの暗号通貨を使った決済へ変わる可能性も、通貨を所与としなければ容易に理解できる。2015/06/16
クサバナリスト
12
説明が若干少なく分かりにくい箇所もあるが、金融に関して教科書的説明ではなく『決済』を元に金融を説明するというユニ-クな著作。こうした金融の捉え方は、より経済実態を考えるのに適しているかもしれない。2015/07/18
とりもり
5
決済を中心に金融を考えるというユニークな本。もっとも、銀行の三大業務は「預金」「貸付」「為替」だから、本来もっと決済は注目されていてもいいハズ。資金決済法の制定や、昨今のFinTechによって急速に決済への関心が高まる中においては、なかなか有用な視座を与えてくれる一冊。但し、個別論点の掘り下げはやや薄く、その点は残念。特に、ビットコインの「情報処理能力本位性」という概念については、もう少し掘り下げて言及して欲しかった。とは言え、決済について知りたい人にはオススメ。★★★★☆2016/02/12