知の創成―身体性認知科学への招待

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  • サイズ B5判/ページ数 724p/高さ 27cm
  • 商品コード 9784320120327
  • NDC分類 007.1
  • Cコード C3041

出版社内容情報

【解説】
近年,認知の主体とその環境とのインタラクション,ならびに認知主体の身体性が知能の発現に果たす役割の大きさが認識されつつある。本書では,これら「身体性認知科学」という新しい概念の提唱者であり,この分野の泰斗である著者が,知を理解するためのさまざまなアプローチを紹介しながら,この概念をわかりやすく解説する。

【目次】
第I 部 知能の研究 基礎と課題
第1章 知能の研究
1.1 知能の特徴
1.2 知能の探求:構成論的なアプローチ
検討課題/本章のまとめ
第2章 古典的人工知能と認知科学の基礎  
2.1 認知科学についての前置き
2.2 認知主義的パラダイム
2.3 知的エージェントのアーキテクチャ
検討課題/本章のまとめ
第3章 古典的人工知能と認知科学の根本的な問題  
3.1 実世界vs. 仮想世界
3.2 古典的システムが抱えるよく知られた問題点
3.3 根本的な問題
3.4 救済策と代替案
検討課題/本章のまとめ
第II 部 身体性認知科学の枠組み  
第4章 身体性認知科学:基本概念  
4.1 完全自律エージェント
4.2 生物学的エージェントと人工エージェント
4.3 創発に向けた設計
 論理に基づくシステムと身体性を有するシステム
4.4 振る舞いの説明
検討課題/本章のまとめ
第5章 適応行動のためのニューラルネットワーク  
5.1 生物のニューラルネットワークから人工ニューラルネットワークへ
5.2 四つあるいは五つの基本事項
5.3 分散適応制御
5.4 ニューラルネットワークの種類
検討課題/本章のまとめ
xx 目 次
第III 部 さまざまなアプローチとエージェントの例  
第6章 ブライテンベルグビークル  
6.1 動機
6.2 14 台のビークル
6.3 振る舞いの分節化と拡張ブライテンベルグアーキテクチャ
検討課題/本章のまとめ
第7章 サブサンプションアーキテクチャ
7.1 行動に基づくロボティクス
7.2 サブサンプションに基づくロボットの設計
7.3 サブサンプションに基づくアーキテクチャの例
7.4 結論:知的システム設計のためのサブサンプションアプローチ
検討課題/本章のまとめ
第8章 人工進化と人工生命
8.1 基本原理
8.2 遺伝的アルゴリズムの紹介:
自律エージェントのニューラルコントローラの進化
8.3 人工進化エージェントの例
8.4 生物学的妥当性を目指して:
ゲノムに基づく細胞間コミュニケーションを通しての細胞成長
8.5 実ロボット,ハードウェアの進化,シミュレーション
8.6 人工生命:その他の例
8.7 方法論的課題と結論
検討課題/本章のまとめ
第9章 その他のアプローチ  
9.1 ダイナミカルシステムアプローチ
9.2 行動経済学
9.3 スキーマに基づくアプローチ
検討課題/本章のまとめ
第IV 部 知的システムの原理  
第10章 自律エージェントの設計原理  
10.1 設計原理の本質
10.2 自律エージェントの設計原理
10.3 文脈の中での設計原理
検討課題/本章のまとめ
第1 1章 並列緩結合プロセスの原理  
11.1 自律エージェントの制御アーキテクチャ
11.2 制御アーキテクチャの古典的見解
xxi 目 次
11.3 並列分散アプローチ
11.4 事例研究:自己充足的ゴミ拾いロボット
検討課題/本章のまとめ
第12章 センサ-モータ協調の原理  
12.1 カテゴリ化:従来のアプローチ
12.2 センサ-モータ協調アプローチ
12.3 事例研究:SMC エージェント
12.4 応用:アクティブビジョン
検討課題/本章のまとめ
第13 章 チープデザイン,冗長性,生態学的バランスの原理  
13.1 チープデザインの原理
13.2 冗長性の原理
13.3 生態学的バランスの原理
検討課題/本章のまとめ
第14章 価値の原理  
14.1 価値システム
14.2 自己組織化
14.3 自律エージェントにおける学習
検討課題/本章のまとめ
第15章 人間の記憶:事例研究
15.1 記憶の定義
15.2 古典的な記憶概念に関する問題
15.3 記憶研究における参照フレーム問題
15.4 代替案
15.5 記憶研究の意義
検討課題/本章のまとめ
第V 部 設計と評価  
第16 章 エージェントの設計における考慮事項  
16.1 予備的設計における考慮事項
16.2 エージェントの設計
16.3 すべてを統合する:制御アーキテクチャ
16.4 まとめと基本的問題
検討課題/本章のまとめ
第17章 評価  
17.1 エージェント評価の基礎
17.2 エージェント実験の実行
17.3 振る舞いを計測する
検討課題/本章のまとめ
xxii 目 次
第VI 部 未来へ向けて  
第18 章 理論と技術およびアプリケーション  
18.1 数々の難問
18.2 理論と技術
18.3 アプリケーション
検討課題/本章のまとめ
第19章 知能再考  
19.1 知能の理論を構成するもの
19.2 社会に対する意味
本章のまとめ
用語集  
参考文献  
訳者あとがき  
人名索引  
内容索引 

序 『知の教典』来る!
前世紀は,まさに科学技術の世紀であった。人類誕生以来,それまでの
世紀とは一線を画し,さまざまな科学的発見と技術の驚異的進歩の世紀で
あった。その権化の一つであるジャンボジェット機から外を眺めると,こ
れも極めつきの人工物,自動車が血管中を流れる血液のように右往左往し
ている。地表に張り付いて過ごしていた人類が,地表を高速で移動した
り,高い空の上,さらに宇宙までその活動をのばすとき,今さらながら人
類の知の偉大さに圧倒される。この知はどこから来たのだろう。ヒトを特
徴づけるものとして,地球上の他の種がなし得なかった二足歩行,道具使
用,そして言語使用が挙げられる。言語が持つ外部記憶のすぐれた特徴が
知の共有を可能にしてきたことには,誰も反対しないであろう。
では,ヒトの知の発生を知るにはどうすればいいか? 進化人類学,発
達心理学,比較認知心理学,脳科学,神経科学などを勉強すればいいだろ
うか? もちろん,それぞれは参考になるし,知を理解する知識も増える。
しかしながら,理解すればするほど微細に入り,無限後退する印象を受け
る。それぞれの科学者は,詳細な科学的データを元に,ヒトの知に対する
想像を膨らませる。それらは非常に機知に富み,示唆的ではあるが,人類
の存在や知を完全に理解することは困難だ。もとよりこの答えに完全性は
あり得ず,多様な理解があることが重要だ。
古来より哲学は,この問題を扱って来た。そして,心理学,社会学と移
行するにつれ,マクロな定式の中でヒトの行動/ 活動の説明を試みて来
た。しかしながら,ヒトという存在の生物物理的な側面に立脚しないた
め,主観的価値観に基づく物語になりがちだ。とは言っても,そこは人類
の知が,それ自身を説明しようと試みているので,大いに参考にはなる
し,十分われわれを魅了もする。
では,これら以外に道はないのであろうか? ヒトの知に対する多様な
理解を可能にするために,第三のアプローチ「設計に基づく手法」があ
る。本書は,このアプローチに主眼をおいた,現代の『知の教典』である。
知的な人工物の代表であるロボットの設計,製作,作動を通じて,ヒトの
知に迫るのである。現在では,ヒトの生涯が遺伝的因子ですべて決定され
るか,環境因子かといった二元論は受け入れ難くなっており,さまざまな
iv 序 『知の教典』来る!
レベルでの遺伝子的要因と環境要因が複雑に相互作用することでヒトを成
り立たせていることが,広く受け入れられている。ということは,ロボッ
トの設計でも,内部構造の設計と与えられる環境の設計が重要であること
を示唆する。従来の工学規範では,後者を限定し前者に重きをおいてき
た。しかしながら,環境が動的に変化することを考慮すると,というより
も,実は環境の多様性や動的な要素が,知の発生に重要であることも知ら
れつつある現在,両者の相互作用を中心とした設計論が必要となる。環境
因子の中には,もちろん,人や他のロボットが含まれている。これこそ多
様性の象徴だ。少し抽象的な議論になってきたが,読者は心配することは
ない。本書は具体的な例をふんだんに盛り込んでおり,読者自身が自分で
ヒトの知の新たな理解を創造させる旅に導いてくれる。興味あるところか
ら入れば良い。
筆者は,本書の著者の一人,ロルフ・ファイファー教授とは,十年来の
付き合いであり,よく酒を酌み交わしながら議論している。彼がスイスの
チューリッヒ大学で講義用に使っていた本書の原本には,何度も目を通し
ている。難しい課題を,例を使って易しく説明しており,知の教典,入門
書にはぴったりである。この日本語版が出版されると聞き,一番心配した
のは翻訳である。多岐に渡る分野を網羅し,知の新たな理解を啓蒙する本
書の翻訳は困難を極めたことは察するに難くない。しかしながら,三人の
監訳者はいずれも,ファイファー教授の元で過ごした経験があり,翻訳に
際し,著者との忌憚無きやりとりが想像できる。翻訳版の出版を可能にし
た三人の監訳者にも感謝したい。また,ファイファー教授自身が親日家で
あり,キリスト教的科学規範からの解放にも,日本の文化的,宗教的価値
観が役立ったとも述べられており,興味深い。先にも書いたように,知の
理解に完全はあり得ない。多様な理解が必要だ。読者の理解を創造し豊か
にするために,本書を入門書として旅に出ていただきたい。
2001 年10 月
大阪大学大学院工学研究科教授
工学博士  浅田 稔 

内容説明

現在、身体性認知科学は、工学だけでなく、心理学や神経生物学、そして動物行動学にまでも影響を与えつつある。では、明らかに知能的で首尾一貫した行動が、思考なしにどのようにして生み出されるのであろうか?知能が思考でないとしたら、いったい何なのであろうか?本書では、全体を通してこのことについて述べていく。

目次

第1部 知能の研究―基礎と課題
第2部 身体性認知科学の枠組み
第3部 さまざまなアプローチとエージェントの例
第4部 知的システムの原理
第5部 設計と評価
第6部 未来へ向けて

著者等紹介

ファイファー,ロルフ[ファイファー,ロルフ][Pfeifer,Rolf]
チューリッヒ大学コンピュータサイエンス学科に所属し、同教授が運営する人工知能研究室において知能の研究、特に知能における身体性の重要性についての研究に携わっている

ファイファー,ロルフ[ファイファー,ロルフ][Soheier,Christian]
ロルフ・ファイファー教授のもとで学位を取得し、現在はカリフォルニア工科大学のポスドクとして、身体性認知科学の研究を行っている

石黒章夫[イシグロアキオ]
1964年生まれ。1991年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了。現在、名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻助教授、工学博士

小林宏[コバヤシヒロシ]
1966年生まれ。1995年東京理科大学大学院工学研究科博士後期課程修了。現在、東京理科大学工学部機械工学科助教授、工学博士

細田耕[ホソダコウ]
1965年生まれ。1993年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。現在、大阪大学大学院工学研究科助教授、工学博士
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感想・レビュー

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みおりえんぬ

0
知的であるとはどういうことか? 古典的な知能観に対して”身体性”というアプローチは衝撃的な新鮮さ。知能は脳だけ見ていてもわからない! 作ることによって理解するという構成論的な方法論。形には意味がある。実際に身体を持つことによって環境と相互作用でき、それによってふるまいが”創発”する。外から見た複雑さと内的なメカニズムは異なる。記号的接地問題や参照フレーム問題、ニューラルネットワークにおけるヘッブ学習など、知るほどに、考えるほどに興味深い。知の創生に迫る探検は奥深い!2015/11/03

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