出版社内容情報
本書は、何世紀にもわたり数学のアマチュアから専門家まで幅広く魅了してきた「フィボナッチ数」と「リュカ数」について、49章にわたってその驚異的な性質の数々を余すところなく解説した書籍である。
フィボナッチ数とリュカ数は定義が明快であることから、あらゆる領域での応用がみられる。その研究は数学だけにとどまらず、日常生活の中や、自然科学の諸分野、芸術にいたるまで多岐にわたるが、それゆえに各分野での研究成果が散逸した状態にあった。本書では、きわめて膨大なそれらトピックについて、昔の稀覯本から最新の研究論文まで可能な限り網羅し、詳細な議論を行なっている。フィボナッチ数とリュカ数をめぐる人類の叡智の結晶ともいえる書籍である。
上巻では、まずはフィボナッチ数とリュカ数の定義から始める。その後、花びらの数や種の螺旋模様、絵画の構図、古代の建造物の比率などといった、自然や生活の中に潜むフィボナッチ数・リュカ数を追究する。その後は下巻への大きな進展を見据えて、黄金比、タイリング、行列式、グラフ理論、組合せ論などの議論を進める。
また本書では、フィボナッチ数とリュカ数の発展に関する歴史的な調査も含まれている。各分野での重要人物の伝記的なスケッチや文献を加えることで、歴史的研究への便宜を図るとともに、「魅力的な数」をめぐる物語に躍動感を与えることを試みた。
各章には、豊富な例題と、繁雑な定理の証明を避けるための数値的・理論的な演習問題を掲載した。パターン認識、推測、証明技術の応用など問題解決へのさまざまなスキルやテクニックを説明し、さらに発展的な内容へ取り組むための足固めとなる準備も進める。
本書は、数学史、組合せ論、整数論に関する高学年および大学院レベルのコースに適している。また、コンピュータ科学者、物理学者、生物学者、電気工学者にとっても有益な資料であり、学部の研究コース、自主研究プロジェクト、卒業論文などにも利用できる。
[原著]Fibonacci and Lucas Numbers with Applications, 2nd edition, Vol.1, Wiley, 2017
【目次】
監訳者まえがき
著者まえがき
符号一覧
第1章 レオナルド・フィボナッチ
第2章 フィボナッチ数
第3章 自然の中に見られるフィボナッチ数
第4章 さらなるフィボナッチおよびリュカ数の出現
第5章 フィボナッチとリュカの恒等式
第6章 幾何学的なパラドックス
第7章 ギボナッチ数
第8章 フィボナッチ・リュカの公式の追加
第9章 ユークリッドの互除法
第10章 可除性
第11章 パスカルの三角形
第12章 パスカル風三角形
第13章 回帰数列と母関数
第14章 組合せモデルI
第15章 細谷の三角形
第16章 黄金比
第17章 黄金三角形と黄金長方形
第18章 黄金幾何学
第19章 連分数
第20章 フィボナッチ行列
第21章 グラフ理論的モデルI
第22章 フィボナッチ行列式
第23章 フィボナッチ・リュカ合同式
第24章 フィボナッチ・リュカ級数
第25章 重みつきフィボナッチ数・リュカ数の和
第26章 フィボナッチ幾何I
第27章 完全性定理
第28章 ナップサック問題
第29章 フィボナッチ数とリュカ数の添え字
第30章 フィボナッチ数と複素平面
付録
省略記号
参考文献
奇数番号の演習解答
索引