出版社内容情報
本書は,「オイラー・ゲッター」という,幾何学,とくにトポロジー(位相幾何学)のアイデアをいくつか取り入れたゲームの作者でもある数学者による,特徴的な書籍である。ゲームという切り口から大学の数学科で勉強する数学を垣間見ていくことにより,数学の一味違った面白さを味わうことができる。
紹介するゲームはボードゲーム,カードゲーム,パズルゲームなどのローテク・ゲームが中心となっており,1940年代に登場したものから,21世紀に入ってから出現したものまで,幅広くとりあげられている。基本的に一つのゲームにつき,トポロジー,体,高次元空間,線形代数,射影平面,オイラー数,多様体,測度といった一つの数学のコンセプトを紹介していく。各章の終わりには,ゲームとは関係しないが,数学界での最近の大きなニュースや研究の実態など,大学数学や数学研究を少しでも身近に感じてもらえるよう,「コラム」を設けている。
高校までに習ったものと一味違う数学に触れる,大学や大学院で学ぶ数学の抽象的な理論がゲームの中で具現化されている様子を見るなど,読者それぞれのレベルに合った,数学の新鮮な楽しみや奥深さを感じることができるであろう。
第1章 スプラウト:いいかげんな幾何学
a. 紙とペン
b. ルール
c. 死んでいく芽
d. スプラウトはトポロジカル
e. 路線図:日常のトポロジー
f. サバイバーは何人?
g. 背後霊よ,成仏せよ
コラム:日本が誇る二大終止定理
第2章 Hex:もう一つのトポロジカル・ゲーム
a. 元祖(?)トポロジカル・ゲーム
b. ルール
c. 引き分けは無し!
d. 戦略盗み
e. ゲーム「Y」
f. 平等なお菓子の切り分け方
コラム:数学の研究って何をする?
第3章 SET:81点が作る4次元空間
a. パターン発見
b. ルール
c. SET組は直線!?
d. 数から空間を作る
e. 4次元以上の空間
f. 加減乗除できます
g. 1+1+1=0?
h. 合同式で集合を割る?
i. 素数は役に立つ
j. SET条件の方程式
k. SET魔法陣
コラム:厳密に大雑把
第4章 ライツアウト:デジタル線形代数
a. 光のパズルゲーム
b. デジタル表現
c. 行列と掃き出し法
d. 2×2ライツアウトを解く
e. 解なし
f. 25=23+2
コラム:大学数学の躓きどころ
第5章 ドブル:有限の中の無限
a. パーティーにうってつけ
b. 有限幾何,再び
c. 遠近法
d. 射影直線
e.「方向」の集合,「比」の集合
f. 射影平面
g. 無限を加えて空間を閉じる
h. 必ず交わる
i. 有限射影平面
j. ドブルと有限射影平面
コラム:無限について
第6章 ブリュッセルズ・スプラウト:オイラーの多面体公式
a. 芽キャベツ
b. オイラーが勝負を決める
c. 多面体
d. オイラーの多面体公式
e. 球面グラフで証明
f. ブリュッセルズ・スプラウトとオイラーの公式
コラム:多面体の最新成果
第7章 アステロイド&トーラス・ゲームズ:貼り合わせて作る曲がった空間
a. アメリカでヒットしたシューティング・ゲーム
b. ドーナツ宇宙
c. トーラス・ゲームズ
d. トーラスとタイル張り
e. メビウスの帯,クラインの壺,射影平面
f. 射影平面と貼り合わせ
g. 多様体と地図
h. 多面体の面を貼り合わせる
i. Curved Spaces
コラム:ポアンカレ予想と国際数学者会議の思い出
第8章 オイラー・ゲッター:トポロジーを測る
a. もう一つの陣取りゲーム
b. ルール
c.「大きさ」とは?
d. グラフのオイラー数と包除原理
e. オイラー数はトポロジカル不変量
f. 面付きグラフのオイラー数
g. 曲面のオイラー数
h. オイラー数計算勝負:コンピュータ vs 人間
i. 引き分けなし
j. いろんな曲面でのオイラー・ゲッター
「あとがき」的なコラム:オイラー・ゲッターとアウトリーチ
安田 健彦[ヤスダ タケヒコ]
著・文・その他