出版社内容情報
データ同化は、数値シミュレーションと現実の観測データを組み合わせて、システムの状態や時間発展を推定する手法である。データ同化を行うと、実際のデータを利用してシミュレーションによる計算を現実に近づけることができる。また、シミュレーションモデルの持つシステムについての知見を利用することで観測の不完全な部分を補うこともできる。もともと数値天気予報の技術として発展した考え方だが、その方法論は様々な分野で活用されるようになっている。
本書は、データ同化で用いられる代表的な方法について基礎から解説したものである。まず、状態空間モデルに基づくデータ同化の定式化を行い、状態空間モデルによる逐次データ同化の基本的な手法として、線型システムを仮定したカルマンフィルタを導入する。さらに、非線型かつ高次元の問題に適用できる代表的な逐次データ同化手法として、アンサンブルカルマンフィルタ、アンサンブル変換カルマンフィルタを紹介する。さらに、逐次データ同化と並ぶ重要なアプローチである4次元変分法として、アジョイント法、アンサンブル変分法を取り上げる。また、比較的単純な題材をデータ同化手法の適用事例として取り上げ、理解を深められるように配慮している。これらの事例に関しては、計算を再現するためのPythonプログラムも配布しているので、参考にしたい方は利用していただきたい。
読者対象としては、大学学部1, 2年生程度の線型代数学、微分積分学、確率、統計の知識を習得済みの方を想定している。
目次
第1章 データ同化の枠組み
第2章 確率分布についての基本的事項
第3章 最小二乗法とベイズ推定
第4章 逐次データ同化とカルマンフィルタ
第5章 アンサンブルカルマンフィルタ
第6章 アンサンブル変換カルマンフィルタ
第7章 アジョイント法
第8章 アンサンブルによる変分法
付録
著者等紹介
中野慎也[ナカノシンヤ]
2004年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。現在、統計数理研究所教授。博士(理学)。専門:地球物理学、データ同化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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